裁判をするとき、契約を締結するとき、弁護士にアドバイスを求めるべきだと私は考えます。病気を治す時、専門家である医師にアドバイスを求めずにその病気を治療するのは、かなり無謀なことです。同様に、弁護士なしで裁判をしたり契約締結することは、かなり無謀なことです。
ただ、専門家に依頼する訳ですから、相応の費用が必要です。私も、事件の依頼を受ける時は、相応の報酬をお願いしています。
もっとも、もしもあなたが合理的にリスクの計算ができる人であれば、弁護士なしで裁判をしたり、契約を締結することも、場合によってはあり得るのかもしれません。
例えば、100万円の貸金債権で裁判を起こすとしましょう。
回収確率は、相手方の破産リスク等を考えれば50%位だとあなたが考えるとしましょう。ところが、弁護士を雇った場合、弁護士費用は着手金・報酬金コミコミで50万円だったとしましょう。そうすると、弁護士を雇って裁判する場合、得られる利益=100万円×50%=50万円、必要な費用=50万円で、結局合理的利益が見込めない、ということになります。勿論、そんな場合であっても、意地や名誉の問題で裁判を行う(訴訟に勝つ価値=プライスレス)、というのであれば、ちゃんと弁護士を雇うべきです。しかし、そうではなくて、とにかくコストを重視するのであれば、弁護士なしで裁判というのも、あり得る選択肢かもしれません。例えば、弁護士を雇わないで裁判をしてミスをする確率が20%だと算定し、自分でやることによるコスト(時間拘束)が20万円だと仮定すれば、自分でやる場合の得られる利益=100万円×50%×80%(ミスがない確率)=40万円、必要な費用=20万円で、差し引き20万円の合理的利益が期待できることになります。
そんな感じで、私も、いつも弁護士を雇うのが合理的な判断であるとは思いません。専門家の1人として、きちんとした報酬を支払って弁護士を雇って欲しいという気持ちはあるけれども、敢えて雇わないという選択肢も、場合によってはあり得ると思います。
また、仮に弁護士に依頼するとしても、自分でも独自に知識を持つことは悪いことではありません。依頼した弁護士が良い弁護士かどうか、自分で判断する必要もあるでしょう。弁護士に任せているのだから安心だけれども、最低限自分の依頼している手続については、一般的にどういう書式が使われ、どういう流れになっているのか、自分で学習し、その結果、疑問点が生じ、その疑問点を依頼している弁護士に投げかけることで、よりよい結果が生じることだってあり得ます。依頼者がちゃんと学んで下さり、依頼者が弁護士には気付かない視点を提供して貰えることは、緊張感を生じさせ、弁護過誤の可能性を減少させ、なにより勝訴や良い契約の締結に近づくという点で依頼者だけではなく受任弁護士にもメリットがあります。
そこで、自分で裁判したりや契約締結したりする時に役に立ちそうな書式を集めてみました。一部は私が自分で作成したもの、一部はそのような書式に関する他の有用なサイトへのリンクになっています。申し訳ありませんが、書式についての質問は受け付けておりません(御意見は受け付けておりますがお返事できないかもしれません)。利用は自己責任でお願いします。書式に間違いがあっても、私は責任を取れません。法的な相談を弁護士に対し行いたい場合は、自分で弁護士を捜されるか、または私に有償の法律相談として見積もりを求めて見て下さい。「藤本大学」では、条件が限定されますが、別途無償の法律相談も受け付けています。
2007年10月1日 藤 本 一 郎
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