ダイオキシン

 ダイオキシンに興味を持った藤本が調べたことを読みやすい程度の量にまとめるつもりが・・・少し多くなったかも。


みなさまのご意見、大募集です。そして大公開予定です。

Index


1,ダイオキシンとは

 ダイオキシンは、ポリ塩化ジベンゾ-p-ジオキシン(PCDD)とポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)の総称(約210種類)です。最大の発生源であるゴミ焼却で言えば、有機物と塩素が結合してできる有機塩素化合物に、400度前後の熱を加えると発生するのです。
 水に溶けず、自然界ではほとんど分解されません。完全に分解するには1300度以上(850度?)で燃焼せねばなりません。

 ダイオキシンそのものが210種類あるのでそれぞれの毒性も異なります。しかし、最も毒性の強い、「2,3,7,8-TCDD」とやらを基準に語られます。以下、様々な基準等が出てきますが、「2,3,7,8-TCDD」による基準です。


2,人体への毒性

 まず、大量に摂取すれば死亡を含めた一般的な毒性が認められる。
 これには、体重減少(消耗性症候群)、胸腺萎縮、肝臓代謝障害、心筋障害、性ホルモンや甲状腺ホルモン代謝並びにコレステロール等脂質代謝への影響、さらに学習能力の低下をはじめ中枢神経症状なども含まれる。

 次に、発ガン性が指摘されている。これは、ベトナム戦争後の退役軍人らの調査によっても相当程度以上の相関性が認められよう。

 また、免疫毒性も動物実験では指摘されている。

 そして、最も深刻かもしれないのは、生殖毒性であろう。妊娠率の低下、出生仔の低体重や奇形児、及び性周期に影響を与える。また、男性精子の減少を引き起こすとも言われる。しかも、動物実験により、世代が進むにつれて少ない量で深刻な被害が出ることが確認されている。つまり、我々の子孫が我々と全く同じ量の摂取であっても、安全性は保証できないということである<注1>。
 


注1
 ラットを用いた3世代実験では、その影響は第1世代では、100ng/kg/day(1日1kg体重に対して100ng(ng=10億分の1g))で、第2及び第3世代では、10ng/kg/day(10分の1)で見られている。


3,何を媒介として人体が害されているか

 ダイオキシンの主発生源は言うまでもなく焼却施設からである(産廃・一般を足して約95%)。

 しかし、貴方の町に産廃施設がないからといって、貴方がダイオキシンに汚染されてないとはいえない。

 摂取媒体として大気からの摂取水の摂取食物からの摂取があるが、実はその9割以上(普通の生活なら98%以上)は食物から(特に魚介類から)の摂取によるものなのである。

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 まず、大気からの摂取の状況から見てみよう。大気中のダイオキシン濃度は以下の通りである。

資料1 大気中のダイオキシン濃度と大気からの摂取量
地域名大気中の濃度
単位:pg/m3(pg=1兆分の1g)
1日体重1kg当たりの摂取量
単位:pg
大都市圏0.5程度0.18
中小都市0.4程度0.15
山間部0.02程度0.02
<環境庁資料の平成2・4・6年度平均>

 以上の数値は(直接のデータは持ち合わせていないが)諸外国よりも数倍高濃度らしい。ただ、摂取量自体は後に見る食物と比べると小さい。
 もっとも、焼却場や産廃場付近は深刻な汚染が広がっている。実際、環境庁の調査でも、大都市の一部でも大気中の濃度が2.6pg/m3だった所も(平成4年調査)ある。産廃場ならそれ以上なのは確実である。



 次に食物からの摂取の状況を見てみよう。
 最初にどんな食物からどの程度のダイオキシンを摂取しているかを示す。

資料2 主要食品別ダイオキシン摂取量
食品名1日当たりの平均摂取量
単位:pg
魚介類105
牛肉類18
11
野菜類15.4
合計55〜295(平均163)

 魚からの摂取が多いのは食物連鎖が高次に続くからではないかと思われる。すなわち、川の汚染→プランクトン→小魚→我々の食べる魚、と汚染が蓄積されるのである。

 そして、日本人は諸外国人よりも多量に摂取している事実を知らねばならない。

資料3 食物からの摂取量の世界比較
国名1日体重1kg当たりの摂取量
単位:pg
日本3.26(注2)
ドイツ2.2
カナダ2.3
オランダ2.0
アメリカ0.3〜3.2
イギリス2.1

注2
データは大阪府下におけるマーケットバスケット方式(=資料2)による。1人平均体重を50kgとして計算
環境庁による9都道府県による調査では、平均1.25(0.26〜2.6)

 大気の濃度と比べてもらえば分かるように、食物摂取によるダイオキシン摂取量は圧倒的である。繰り返しに近いが、既に私も含めて、日本国民はダイオキシンに犯されていることを自覚せねば、相当ヤバいことは分かるだろう。



 最後に飲料水からの摂取であるが、一日平均で0.0〜1.3pgである。これは付近の川の状況により異なる。また、この数値が高い地方での魚は相当危険と言えよう。魚介類の危険性を考え、参考に日本の湾の汚染度だけ提示する。

資料4 海・湖のダイオキシン濃度
名前底質1g当たりの濃度
単位:ng/g
琵琶湖(2カ所平均)0.021
諏訪湖0.034
霞ヶ浦(2カ所平均)0.030
東京湾(4カ所平均)0.030
大阪湾(4カ所平均)0.030
駿河湾0.0052
伊勢湾(2カ所平均)0.0144
広島湾0.0068
紀伊水道0.0083


4,焼却炉の現実と規制

 厚生省の発表(97年6月24日)によると、ゴミ焼却場(全国1641カ所中、調査対象は1601カ所)のうち、7%に当たる105カ所で、ダイオキシン濃度が80ng/nm3を越えた。そして、この80ng/nm3を当面の現存炉の規制基準とする。

 しかし、この80ng/nm3という基準は緊急のものとはいえ、かなり甘い。新設炉0.1ng/nm3以下という基準も、相当厳しいように見えるが、現在存在する炉に対してはこの基準は適用されない。
 これで、日本の状況は良くなるのであろうか。


 ダイオキシンを減らす方法は2つあって、そもそも作らないか、分解するかである。政府は後者を基本に規制を作っている。すなわち、新規の炉は連続炉という燃焼温度の高い炉を導入して、分解しようとするものだ。確かにこれは旧施設では十分には導入できまい。
 しかし、ダイオキシンは低温で燃焼しても分解する方法はある。すなわち、塩素と有機物が結合しないようにすればいいのである。私の化学の知識は高校まで(法学部だもの・・)であるが、塩素が強い陰イオンであるが、イオン化傾向の高い金属と混ぜて燃焼すれば有機物との結合を防げる。そのことを応用して、石灰岩のようなカルシウムを含む物質と共に燃焼させれば、500度の低温燃焼でもダイオキシンを分解できるそうである。


 政府は現状追認的対策を取るのをやめ、先進諸国と比べても深刻な汚染が進んでいる日本にふさわしい、より厳しい基準を適用すべきである。そしてそれは様々な方法で可能である。そもそもドイツではもっと厳しい基準があるのだし・・。


5,私たちのできる対策

 まず、ゴミを家庭で燃やさないことがある。
 地域によっては家庭での小型焼却器を使用して普通ゴミを燃やしているようだが、燃焼温度が低いためにダイオキシンが発生しやすい。ダイオキシンの発生総量そのものは少ないかもしれないが、毒性を考えると危険である。
 尚、既に小中高等学校での学校での焼却施設の使用を全廃することが決まっていることも付け加えておく。

 次に、ゴミをきちんと分別して出すことである。
 燃焼ゴミのなかに塩素を含む物質を出せば、ダイオキシンは発生する可能性が高い。ペットボトル等のプラスチック容器は特に注意すべきである。


 また、環境問題全般でいえることは、私たちが環境問題に高く関心を持ち、様々な場面で環境問題を考慮して行動することも大切であろう。
 例えば乗用車を購入する時。ハイブリッド車や直噴エンジン(GDI等)の車を買うこと(日本のCO2発生の10%は車からである。特に最近のRV車ブームは深刻な環境破壊である)を考えねばなるまい。
 例えば選挙。近視眼的、利益誘導型政治を続ける政治家でなく、環境を含めた将来を考えている政治家や政党に代表となってもらうことも大切だろう。これを私たちが怠れば政治家はお金の関係する経済界の要求の方に耳を傾けてしまうからだ。



参考資料

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