University of California, Los Angeles
School of Law

3 米国司法試験(Bar Exam)について

(1)概説

 米国は、各州において司法試験を実施している。従って、州によって司法試験受験資格要件は異なる。

 米国の各州の要件を全て知っている訳ではないが、ニューヨーク州と、カリフォルニア州の司法試験の受験要件について、少し誤った情報もあるし、他方で、私にも分からないところもあるので、書いてみて、より詳しい情報をお持ちの人の提供を待ってみたい。

(2)NY州司法試験

 まず日本人が受験するのにはもっとも一般的なニューヨーク州の司法試験の受験資格であるが、米国のロースクールで一般的な3年制のJDの卒業生以外にも、次のような人々に受験資格が認められている(RULES OF THE COURT OF APPEALS FOR THE ADMISSION OF ATTORNEYS AND COUNSELORS AT LAW, Section 520, Subsection 6 "Study of law in foreign country, required legal education
1:コモンロー(英米法)の国でJDに相当する3年程度の法学教育を受けた人
2:コモンローの国で3年には満たないが2年以上の法学教育を受けた人
3:3年程度の法学教育を受け、かつ、米国で承認されているロースクールにおいて最低20単位によって構成される法学教育(但し基本的な米国法のコースを複数含むこと)を修了した人

日本人の場合は、1,2は殆ど該当しないであろうから、3に該当すれば、日本で弁護士ではなくても、受験でき。そして、この「最低20単位」の要件を満たすために存在する大学院のコースこそが、1年制のLLMと呼ばれるコースなのである。また、以上から、別にLLMという呼び名ではなくても、20単位以上で構成される米国で承認されているロースクールのコースであれば、ニューヨーク州の司法試験の受験資格があることになる。「SJD」などの名称のProgramでも構わないし、サマープログラムでも20単位以上を獲得できる1つのプログラムであればOKである(UC Davisにはそのようなプログラムが存在する)。

 ところで、既述の通り、20単位以上取れば良いのだが、「修了」が要件なので、単位数は足りているのに、何かのrequirement(例えば論文1通とか)を満たさずに卒業できなかった人は、駄目である。

 いま、NY州司法試験に関し、日本人の間でホットかつ難解な話題は、「基本的な米国法のコースを複数含むこと」という上記規則の解釈である。一般には、2科目以上のニューヨーク州の司法試験で出題される科目を含めば良い、ということのようであるが、規則には上述の程度しかかいていないので、司法試験委員会の解釈に任されている。解釈基準がHPに再び記載されてるので注意。要はNY州司法試験にある科目=基本科目である。

(3)カリフォルニア州司法試験

 さて、ここまでは弁護士の世界では結構知られていることであるが、次に米国でよく取得されるカリフォルニア州の司法試験の受験資格については、余り書かれていないようなので、私が知る限りのことを書きたい。というのは、結構嘘を書く人もいるからである。例えば、某雑誌に留学経験者が記載していた「コモンロー以外の国の法学部卒業生は,LL.M.を卒業することによりニューヨーク州又はカリフォルニア州の司法試験の受験資格が与えられる」という記載はカリフォルニア州の司法試験に関しては大きな間違いである。何故なら、カリフォルニア州の司法試験には、日本の司法試験の1次試験のような、「1年生試験」(First-Year Law Students' Examination)があるが、LLM生は、この免除資格が得られるに過ぎないのであって、学生としては、コモンローの国ではない限り、いきなり司法試験の受験資格は得られないのである(Rule VII, Section 2参照)。
 それでも、カリフォルニア州の司法試験を受けている日本人は現にいるが、それは、ニューヨーク州にはない資格要件・・・"Attorney Applications"という要件があるからである(Rule IV)。なんと、コモンロー以外の国であっても、「弁護士」であれば、受験資格がある。従って、司法試験に通る自信があれば、LLMすら学位取得しなくても、カリフォルニア州の司法試験は受けられる。但し、注意を要するのは、日本では検察官や裁判官も司法試験を通っているが、彼らは弁護士ではないので、受験資格がないのである。

 そうだとすれば、みな弁護士は、カリフォルニア州の司法試験を受ければよくて、ニューヨーク州なんて受けなくて良いようにも聞こえるが、ちょっと違う。カリフォルニア州の司法試験は、試験自体がニューヨーク州より大変である。日数で言えば、CAは3日、NYは2日、配点でいえば、CAは65%がCA州法、NYは50%が州法である。また、CAは論文の比率が高く、NYは、エッセイと統一試験を含めた非択一部分で50%である。司法試験合格率も、CAは約50%強、NYは60%強のようである。

 しかも、カリフォルニア州は、州法で、SSN(ソシアルセキュリティナンバー)の取得を受験の要件としている。現在の学生は、仕事がない限り、SSNは取得できないことになった(2004年秋の連邦政府の政策変更による)。従って、現在はカリフォルニア州の司法試験の受験は、SSNのせいで困難となっている(F1ビザ学生にも許されている大学内アルバイトをしてSSNを取得すれば可能だが、そんな時間はない・・・)。なお、この点は2006年1月より変更となり、petitionによってSSNがなくても受験できるようになったが、手続が非常に煩雑(書式もCALBARのWebsite上には存在しない)なので、SSNを取得できる人は取得して申し込む方が無難である。

(4)UCLA School of Lawと司法試験

 LLM学生の半分程度が米国の司法試験受験を検討しているようで、実際、まもなく11月に行われるMPRE(Multiple Professional Responsiblity Examination)もその程度の学生が受験するようである。勿論、それは学生が勝手にやっているだけで、大学が何かサポートしてくれる訳ではない。

  文責 藤本一郎 2005年10月17日

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