身近な著作権・ネット法問題Q&A

はじめに
第1版 平成18(2006)年11月1日

 最近、Napster, Grokster, YouTubeやらのお陰か、著作権に関する疑問をよーく聞くようになりました。そこで、Q&A形式で、具体的に、身近な著作権問題に答えてみようと思います。

 最初は「著作権」に限定して書こうと思っていたのですが、関連するインターネット関連法の問題についても、書き足してみました。

 一応目標としては、ぎーちの普段の弁護士としての仕事通り、「難しいことを分かるように易しく説明する」「易しく説明するが、法的な問題点を省略せずに、何が問題かをきちんと説明する」ということを心がけているつもりです。あと、法的な分野の順番に沿って(複製権について・・・私的複製について・・・)書くのではなく、場面や対象となる人ごとに(音楽や映像のコピー・・・ブログを作るとき・・・ミクシー・・・)書いてみようと思っています。

   御意見・御感想等ありましたら、是非わたくし藤本一郎までメール(すみませんが大量のゴミメールに紛れる可能性があるのでタイトル等日本語でお願いします)して下さると嬉しいです。あと今日現在(11/01/2006)ではミクシやってますのでミクシで探して下さるのもありです(本名かつあだ名「ぎーち」でやってます)。

 なお、いつまでやれるか分かりませんが、初回無料(但し条件つき)の法律相談については、こちらで聞いてみて下さい(回答は全て弁護士藤本一郎本人がやっています)。なお、面白い質問はこちらに追加したいと思います。

 いつか本とかにならないかなー。出版社さん、みて下さったら是非御連絡を。

 それでは、ま、Q&Aに行きましょか。

【注意事項】

 質問によっては、本来は著作権者のみならず、著作隣接権者(実演家、レコード制作者、放送事業者)も享受できる権利があったり、彼らの権利(著作隣接権)を侵害する場合があったりする訳ですが、説明を簡易にするために言及していない場合があります。ご留意下さい。

 なお、以下は法的な見解を述べた訳であって、何らかの違法な行為を推奨する訳ではないことを十分留意して下さい。また、私見については、相応の根拠をもって語っていますが、反対説も有力である場合があります。「行列のできる法律相談所」をご覧の皆様ならご承知の通り、法的な見解が微妙なことは多いものです。

 本稿は2006年10月現在の国内・国外の法令に基づき記載しています。

Q一覧
第1章 音楽や映像のコピー・コピープロテクトに関する著作権問題
  1. Q1 音楽CDをレンタルショップで借りてきて自宅でダビングするのは違法ですか?友達がレンタルショップで借りたCDをダビングしたCDをダビングする場合はどうですか?
  2. Q2 音楽CDを私的利用のためにコピーするときは補償金を払わなければいけないと聞いたのですが、私は払ったことがありません。それでも著作権侵害をしていないのでしょうか?
  3. Q3 空のCDに音楽をダビングすることと、Ipodに音楽をダビングすることで、なんか法的に違いはありますか?
  4. Q4 友達に誕生日プレゼントとして私の持っているCDの中から色々な音楽をセレクトして1つのCDにコピーしてあげようと思うのですが、これは違法ですか?
  5. Q5 WinnyやWinMXを使うのは違法ですか?
  6. Q6 自分で買ってきたCDを中古CDショップに売ることは違法ですか?本を売るのは違法ではないのにCDやパソコンのソフトを売る場合は違法になることがあるということを聞きましたので質問しました。
  7. Q7 DVDソフトを複製(コピー)するのは、CDとは違って違法だと聞きましたが、本当ですか?
  8. Q8 日本のDVD(リージョン2)とアメリカのDVD(リージョン1)の双方が見たいです。「リージョンフリー」なDVDプレイヤーを買うのは違法ですか?
  9. Q9 YouTubeに誰かが日本のテレビ番組をアップロードしています。これを見るのは違法ですか?
  10. Q10 昨年(2005年)ソニーがインターネット上で自宅のTV画像を転送して見ることができるサーバーを発売し人気となったと思うのですが、テレビ番組をネットにアップロードするのは違法なのではないのでしょうか?そんな裁判があったような気もするのですが。。。
  11. Q11 そういえば、例の「ローマの休日」など、1953年公開の映画の著作権の存続期間は、結局50年ですか?70年ですか??
第2章 Websiteやブログを見ていて/作っていて感じる著作権問題
  1. Q12 無断リンクは違法ですか?
  2. Q13 ホームページの下の方に(C)マーク(「Copyright (C) 2006 *** All rights reserved」という記載)をときどき見るのですが、これってどんな意味があるのでしょうか?
  3. Q14 最近のブログの中には、朝日新聞や日経新聞などのネット上のニュースをそのまま引用して、それにちょこっとコメントを加えて掲載している人が結構いますよねえー。それって、もともとの引用元(朝日新聞とか、日経新聞)を書かなければ違法ですか?
  4. Q15 ブログに書き込まれたコメントを勝手に消すのは、大丈夫でしょうか?別に名誉毀損やプライバシー侵害をするようなコメントじゃないのですが、ちょっとウザイので。。。
  5. Q16 最近、ときどき裁判をやっている当事者が裁判の書類をネット上で公開しているのを見かけます。裁判書類は公開しても良いものなのでしょうか?
第3章 レストラン・カフェ・バーなどを経営している人が知っておくべき著作権問題
  1. Q21 定食屋を経営しています(座席数24席)。野球中継などTV放送を流すのは違法だと聞いたことがあるのですが、本当ですか?ラジオはどうですか?
  2. Q22 カフェを経営しています。洒落た音楽をCDなどを使って流したいと思うのですが、違法ですか?
  3. Q23 バーを経営しています。お客様にカラオケができるようにして貰うと思うのですが、利用料を払う業者のやつではなくて、自分でマイクと音楽を揃えようと思っています。違法ですか?
  4. Q24 京阪電鉄の特急・K特急の3000・8000系車両には「テレビカー」が搭載されているのですが、これは著作権法上、特別な利用許諾を得たりしなくてもOKなのでしょうか?
第4章 教育機関(含む「おけいこ」「図書館」)が知っておくべき著作権問題

  1. Q31 最近「赤本」を解いていると、国語の問題文が欠けていることがあります。著作権の問題だと聞いたのですが、著作者の傲慢ではありませんか?
  2. Q32 ピアノ教室を経営しています。ピアノの発表会をやるのですが、楽譜や歌詞を来場者にコピーして配布するのは問題ありませんか?発表会来場は無料としますが、当然発表者は私の生徒ですので、私に月謝を払っています。
  3. Q33 学祭で素人がモー娘。の歌を歌うのですが、なんか問題ありますか?ちなみにこのコンサート自体は無料ですが、学祭自体の入場料が外部者の場合200円かかります。
  4. Q34 図書館が保有しているDVDやビデオの映像を図書館で無料で見られるサービスがあるのですが、これは著作権法上オッケーなのでしょうか?なんかビデオレンタル屋で借りてくるのが馬鹿らしくなってしまうのですが。
  5. Q35 塾を経営しています。塾で問題集や教科書をコピーして、適当に空欄をつくったり問題を変えたりして作成したオリジナルの問題を生徒に対し実施したりするのですが、著作権法上なんか問題がありますか?
第8章 2ちゃんねるでの法的問題
  1. Q81 2ちゃんねるで匿名の書き込みで私の名誉が毀損され、プライバシーが侵害されました・・・でも、微妙に私本人の名前は明らかになっていないんですが、でも会社の人間なら私だって分かります。こういう場合、@削除してもらえますか?A誰が書き込んだか開示されますか?
  2. Q82 一体どういった書き込みがプライバシー侵害として違法になるのでしょうか?なんか今ひとつその境界が分からないのですが・・・
第9章 Social Network Service(SNS)での法的問題(ミクシー(MIXI)やGreeなど)
  1. Q91 なぜミクシー(MIXI)は18歳以上でないとできないのですか。高校生だってMIXIをやりたい!
  2. Q92 ミクシー (Mixi) で書いた「日記」は誰のものですか?もしもミクシーに勝手に消されたら文句言えますか?
  3. Q93 ミクシー (Mixi) の「マイミク」が、「日記」をつけているのですが、「友人以外には非公開」の設定がしてあります。そこに書いていることを他の人に喋ったら違法ですか?
これらを全部読まれた方へ

Q1 音楽CDをレンタルショップで借りてきて自宅でダビングするのは違法ですか?

 結論からすれば、自宅でコピーするだけなら、通常は適法です。

 法律の仕組み通りに解説すると、音楽CDは、その著作権者の著作物であって、それを著作権者の許諾(著作63条)なしに複製(ダビング)するというのは、著作権の1つである複製権(著作21条)の侵害になる筈です。

 ところが、我が国の著作権法には大きな例外があって、「私的利用のための複製」(著作30条)であれば著作権侵害にはなりません

 ここで「私的利用のための複製」とは、『個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とする』複製のことを言います。ですから、自分や家族が聞く目的で、レンタルショップで借りてきたCDをダビングする行為は、通常はこの著作権法30条1項に基づき、複製権侵害が発生しないのです。

 なお、「私的利用のための複製」に該当するためには、複製する「もと」のデータが適法に作成されていること、までは要求されていません。従って、適法にレンタルしてきた正規CDを複製する場合は勿論、友達が借りてきたCDを複製して作った友達作成のCDを複製する場合であっても、「私的利用のための複製」に該当する可能性があります。

 勿論、他人にあげる目的で複製すればこれは私的複製にはならず、複製権侵害が発生します。従って、CDを提供した友達の側が、あなたに複製させる目的でそのCDを作成したとして、「私的利用のための複製」に該当しない、と判断され、著作権侵害と判断さられるかもしれません。 また、著作権法上違法ではないからといって、他の法律・契約上違法ではないということまで言うことはできないので、悪質な行為について別途不法行為等が成立する可能性が0ではないことは心に留めておいて下さい。

 なお、「私的利用のための複製」であっても正当化されない例外的な場合もありますが、これはDVDのコピーに関して後で説明します(⇒Q7)。

Q2 音楽CDを私的利用のためにコピーするときは補償金を払わなければいけないと聞いたのですが、私は払ったことがありません。それでも著作権侵害をしていないのでしょうか?

 答えをいえば、多分貴方は払ってしまっていますよ、たぶん大丈夫です。

 まず第1に補償金制度について説明します。

 これは、もともとはドイツでスタートした制度なのですが、我が国では、デジタルデータに限って認めています。たとえ、「私的利用の複製」をする場合でも、その複製がアナログと異なりデジタルの場合、極めて高いレベルでできてしまう、つまりは、原本とコピーの差がない良質なものができてしまうので、安易にこれを認めると著作権者や実演家・レコード制作者の権利が失われてしまう・・・、ということで、複製する人に補償金を払わせることにして、私的利用の複製の「対価」を払わせることにしたのです。ですから、例えば、MDやCD、DVDなど、デジタル音楽や映像の複製を「私的利用の複製」として行う人は、その複製は適法ですが、「補償金」を払わなければいけないことになったのです(著作30条2項)。

 じゃあ、どのように払うのでしょうか?

 例えば、ダビングするためのブランクCDを買う時に「音楽用CD-R」を買ったでしょ?あれって「PCデータ用CD-R」よりも少し高くありませんでしたか?

 つまり、そういうダビングするメディア(空のCD、MD、DVD)の販売価格に、予め「補償金」が上乗せされているのです。ですから、あなたは既にその補償金を払っている筈です。

 データ用CD-Rを買ってしまって音楽CDをダビングしてしまった場合、これは技術的には可能であっても、補償金を払っていないことになります。従ってその場合は補償金を払う義務を履行していない(著作権法30条2項違反)となります。逆に、ちょっと高い音楽用CD-Rを買ってそのような音楽等のダビングをしなかった場合は、前払した補償金の返還請求をすることもできます。

 集められた補償金は、権利者団体を経由して、定められたルールに基づき、著作権者・実演家・レコード制作者に分配されることになっています。

 

Q3 空のCDに音楽をダビングすることと、Ipodに音楽をダビングすることで、なんか法的に違いはありますか?

 答えから言えば、あります。

 さきほども言いましたが、レンタルショップ(例えばツタ屋)で借りてきたCDをダビングすることだけなら、「私的利用のための複製」で違法にはならないのですが、その代わり、補償金(著作30条2項)を支払わなければいけないのですが、これは、その複製する媒体(メディア)が『当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるもの』である場合に限られています。言い換えれば、政令で定められていない媒体に保存する場合は、この補償金を支払う必要がないのです。

 そして、PCやIpodなど、HDDを記録媒体とする場合には、補償金を支払う必要がいまのところありません(このことは2005年に文化庁の審議会でかなり激論となったのですが、2005年現在では補償金の対象とすることからは見送られました)。

 ですから、目には見えませんが、CD-RやDVD-RAMにバックアップするよりはIpodにバックアップする方が「法的に」安い、と言えるかもしれませんねー。

Q4 友達に誕生日プレゼントとして私の持っているCDの中から色々な音楽をセレクトして1つのCDにコピーしてあげようと思うのですが、これは違法ですか?

 おっと、これは違法(譲渡権の侵害)です。

 確かに単に貴方がCDをダビングするだけであれば、私的複製で違法ではない、ということになるのですが、今回は複製(ダビング)の後で譲渡をする、という行為が加わっています。譲渡権というのは著作権の1つでして、著作権者に無断で譲渡してはいけない、ということになっています(著作26条の2)。

 複製権については、「私的利用のための複製」として違法じゃなくなるのですが、譲渡権については、そのような規定がないので、今回の行為はたとえ友達間であっても(もっといえば、たとえ家族であっても)、違法ということになります。そもそも、複製の段階で他人にあげる目的で複製していれば、複製権侵害にもなることは既にQ1でも見たとおりです。

 なお、買ったCDそのものを譲渡する行為であれば、譲渡権の「消尽」によって違法にはならないのが原則なのですが、詳しくはQ6で説明します。  

Q5 WinnyやWinMXを使うのは違法ですか?

 とても難しい質問ですね。使い方次第では違法になるし、適法にもなります。ちょっと長く複雑になりますが、興味があったら、取りあえず目が覚めるようにお茶か紅茶の準備をして(すみません、わたくし藤本一郎はコーヒーはアイスカフェラテ以外苦手なんで、遠慮して下さい)ちゃんと読んでみて下さい。


 簡単な回答は、(1)もしも貴方が著作権で保護されている音楽や映像をこのソフトを使って他人にあげてしまう(アップロード)ができる状態になっているなら(実際にファイルがダウンロードされたかどうかではなくて、できる状態だったかどうか)、明らかに著作権侵害となりますが、(2)単にこのソフトを使ってファイルを貰ってくる(ダウンロード)だけであれば、違法ではない可能性があります。

 まず、ファイルを取ってくる(ダウンロード)ためには、誰かがアップロードしなければいけませんよね?一般にネット上にデータを置くには、サーバーと呼ばれるあなたが使っているコンピュータとは別のコンピュータにデータをアップロードします。例えばYouTubeとかはそういう大きな大きなサーバーにデータを置いてしまうわけです。この、サーバーにデータを置く行為、置いた瞬間は誰もデータを取っていない(ダウンロードしていない)のですが、置いたことによって他の公衆に「送信可能」になった、ということで、著作権の1つ公衆送信権の行使だということになります。そこで、これを著作権者の許可なくやれば、著作権侵害ということになるわけです。

 ところで、そのWinMXやWinnyは、そんな大きなサーバーはありません。個々の自分のパソコンにデータを置いたまま、そこに他人がアクセスしてダウンロードすることを許してしまうのです(だから意図しないデータが流出して個人情報の流出を招く訳です・・・大きな中央サーバーなくデータが分散すること自体は悪いことではないのです)。そこでファイルそのものはアップロードしていない訳ですが、しかし、もし自分のPCの中で複製していたデータが他のWinMXやWinnyで取得できる状態(送信可能化)になっていれば、たとえアップロードしていなくても、同様に(許可がなければ)著作権侵害(公衆送信権の侵害)になる訳です。

 次にダウンロードですが、ダウンロードそのものは、公衆送信権の侵害ではありません。ダウンロードによりファイルを複製する訳で、そこで著作者等の許可なく複製したことにより複製権侵害が発生します。しかし複製権については、既に見てきた「私的利用のための複製」によって違法ではない、ということになる可能性があります。

 じゃあ、WinnyやWinMXで音楽や映像など、著作権で保護されるファイルであっても、ダウンロードだけしてれば同じように著作権侵害にはならないのではないか??確かにそうかもしれません。但し気を付けたいのは、自分ではダウンロードしかしていない場合でも、これらのソフトの利用によって、自分のパソコンから誰かがデータを取得できる状態になっている場合は、たとえ現実には誰1人としてそのパソコンからファイルをダウンロードしていなかったとしても、公衆送信権(送信可能化権)の侵害が発生している訳です。そして、ソフトウェアの設定によっては、簡単にデータが「送信可能化」となっている場合があり、だからこそ沢山のWinny・WinMxを使ったユーザーによる意図せぬ個人情報の「流出」事件が発生しているという現実をよく理解する必要があります。

 なお、ダウンロードだけなら私的複製で違法ではない可能性がある、これは日本法ではその通りなのですが、インターネットには国境がないので、他国の著作権法上そうなるか、と言われたら微妙です。例えば米国では、「私的利用のための複製」という理由で著作権侵害にならない、という理屈はありません。もっと概括的に"Fair Use"だったら著作権侵害にはならないという理屈があるのですが、Fair Useとなるための4要件を検討すると、単なるダウンロードではFair Useにならないと思われます。実際米国では何万人という学生が著作権侵害を理由として音楽会社から訴訟で訴えられているのが現実です。

 以上総合すると、単なるダウンロードといっても、WinnyやWinMxというソフトウェアの性質を考慮すれば、また、インターネットという国境がないメディアの性質を考慮すれば、あまり安易に音楽や映像をこれらのソフトで交換することは勧められません。ただし、違法ではない使い方というのもあるので、使うならしっかり何が違法で何が違法でないかを見極める必要があります。

Q6 自分で買ってきたCDを中古CDショップに売ることは違法ですか?本を売るのは違法ではないのにCDやパソコンのソフトを売る場合は違法になることがあるということを聞きましたので質問しました。

 原則としては、買った著作物を他に販売することは可能です。
 しかし、例外もあるので、できれば正しい知識を身につけて下さい。

 まず理屈ですが、著作権者には、自分が作成した著作物を自由に複製し(複製権、著作21)、自由に譲渡する権利(譲渡権、著作26条の2)があります。たとえ、その著作物が化体したモノ(本、CDなど)を売り渡したとしても、その所有権は移転するでしょうが、著作権まで全部なくなってしまう訳ではありません。ですから、原則論からすれば、例え売ってしまった本やCDであっても、その著作物を勝手に買い手が複製すれば複製権侵害になりますし、他に譲渡すれば譲渡権侵害になる筈です。

 しかしこの理屈を押し進めると、既に著作権者は、自分の著作物の価値について、対価を貰って一度回収しているのに、その買い手が誰かに転売する時に更に対価を回収できることになって、利得の「二重取り」になってしまいます。そこで法は、このような既に対価を回収している著作物を更に譲渡する場合には、もうその譲渡権は「消尽」したものとして、著作権者であっても、再譲渡する際に譲渡権を主張することはできない、ということになっています(これをFirst Sale Doctrineとも言います)。このような「消尽」の基本的な理屈は、世界的に共通です(但しどの範囲で「消尽」するかについて細かい違いがあります)。

 そうすると、お店で買った著作物を再譲渡、つまりは中古屋さんに販売するのは、著作権法上はオッケーということになるのですが、最初にも述べたとおり、ちょっと気を付けなければいけない知識があります。

 それは、実は貴方が「買った」と思っている著作物を、実は「借りた」に過ぎない場合です。先ほども述べたとおり、「買った」著作物を再譲渡する行為は著作権者の譲渡権の「消尽」によって自由となりました。しかし、もしも著作権者が、実は所有権を譲渡(販売)したのではなくて、ソフトウェアなどの利用権を「レンタル」ないし「ライセンス」した(貸した)に過ぎない、という主張をしてきたらどうなるでしょうか。我が国では、「買った」ものであれば売った人に文句言われずに自由に譲渡できるのが原則です(著作権法がその例外だった訳です)が、「借りた」ものであれば、著作権法に関係なく、貸した人の許諾なく譲渡してはいけないことになります。そして貴方の持っているソフトウェアの説明書などを見ると「利用許諾(ライセンス)承諾書」という記載があるだけで、そのソフトウェアを「売った」とはどこにも書いていない筈です。もしも本当に、CDやソフトウェアを「借りた」に過ぎないという合意が成立しているなら、例え一般には「消尽」するような場合であっても、自由に再販売できない、ということになりかねません。

 しかしちょっと待って下さい。貴方はそのソフトウェアやCDを買う時に、そんな「売買じゃなくてライセンスだ」っていう合意を誰かとしましたか?していないでしょう?合意していないなら、店頭で特に異議を言われずにお金を払って「買った」なら、説明書に何と書いてあっても、「貸す」「借りる」という契約は成立していない筈です。確かにソフトウェアやCDのパッケージを開けると、そのようなライセンスの約款が出てきますが、これはもう買った後の話。そんなものが入っていたからといって、売買してしまったものがいきなりライセンスに変わるとは考えられていません。

 ただ、いくつか注意しなければいけないのは、例えばインターネット上でのダイレクト販売などです。ここでは、画面上に「以上の約款に合意される場合、下の○○をクリックして決済画面に進んで下さい」等の表示が現れます。その約款の中に、売買じゃなくて賃貸だという記載があったなら??そうです、「貸す」「借りる」という約束が成立した上で決済をしていることになります。ですから、そのような場合は、売買ではなくまさにライセンス契約が成立したと言えそうですので、自由に再譲渡することはできないと考える方が自然と言えそうです。

 このように、実は売買したつもりで、単にライセンスを受けたに過ぎないような場面では、「買って」いない訳ですから、再譲渡してはいけない、ということがあります。その判断が難しいこともありますので、特にそのようなことを業としている方は、ビジネスモデルを検討する際に十分留意されることをオススメします。

Q7 DVDソフトを複製(コピー)するのは、CDとは違って違法だと聞きましたが、本当ですか?

 これも難しいので、頭をクリアーにすべく、お茶か紅茶でも飲みながら、ゆっくり読んで下さい。

 既にQ1でも見たとおり、場合によっては補償金を払う必要があるとはいえ、原則的にCDの複製は、私的利用のためであれば違法ではありません。しかし、同じようにDVDを複製する場合は、ちょっと違う、と聞いたことがある人もいるかもしれません。何がどう違うのでしょうか。実は、いま市販されているDVDには、通常、一定の(広義の)コピープロテクト技術が使われていることと関係があります。コピープロテクト技術によって、色々考えなければいけない論点は増えるのですが、結論としては、DVDの複製は、「私的利用のための複製」であっても違法じゃない場合が多いが、違法となる場合もある、ということになります。

「私的利用のための複製」であっても、違法となる例外がある!

 まず、著作権法30条1項は、「私的利用のための複製」を合法化する効果があることについては既に何度か触れてきました。その1項には実は例外があります(30条1項2号)。

『著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。

2 技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第百二十条の二第一号及び第二号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合』

 これ、やたら難しいですが、(a)「技術的保護手段」に用いられている信号の除去・改変で、(b)その結果、その技術的保護手段が所期したような防止行為が発生し・抑止結果に障害が発生するような場合、「私的利用のための複製」であっても、やっぱり違法になってしまう、ということです。

 そして、DVDは、その著作物を保護するために、(広義の)コピープロテクト技術が使われていることが広く知られています。だから、これを回避して「複製」しても、30条1項2号によって、「私的利用のための複製」であったとしても例外的にDVDのコピーは違法(複製権侵害)、と考える人もいるかもしれません。

全ての(広義の)コピー防止技術が著作権法上、回避したら違法となる「技術的保護手段」に該当する訳ではない!

 ところで、「技術的保護手段」とは、 『電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号において「電磁的方法」という。)により、第十七条第一項に規定する著作者人格権若しくは著作権又は第八十九条第一項に規定する実演家人格権若しくは同条第六項に規定する著作隣接権(以下この号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第三十条第一項第二号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(次号において「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、又は送信する方式によるものをいう。』(著作2条1項20号)

 つまり、「技術的保護手段」に該当するには、(1)著作権侵害防止・抑止の手段で、(2)著作物等の利用に際し、(3)機器が特定の反応をする信号を記録しまたは送信する方式、を言います。言い換えれば、(広義の)コピー防止技術なら何でも「技術的保護手段」になるのではなく、(1)著作権侵害の防止(例えば複製権・公衆送信権・譲渡権)とは直接関係のない著作物の利用そのものを妨げるような行為は、「技術的保護手段」にはならない、と考えられています。

 言い換えると、広義のコピープロテクト技術には著作権法上2種類に分類できて、複製や公衆送信を直接防止する「コピーコントロール」は著作権法上の「技術的保護手段」に該当するが、単純にそのDVDを見れなくする、スクランブルをかけるといった「アクセスコントロール」は、著作権法上の「技術的保護手段」に該当しない、と言うことができるといえます。

DVD-Video規格で使われているCSSという技術は「技術的保護手段」ではない⇒これを回避しても著作権法違反ではない可能性が高い

 では、どのような場合が「アクセスコントロール」となるのでしょうか。争いなく言われる例は、WOWOWの放送にあるような「スクランブル」です。WOWOWの放送は、無契約ではユーザーは「スクランブル」のかかったぐじゃぐじゃな放送しか見ることができません。この結果、著作物の複製もできなくはなるのですが、それ以前の問題として、著作物を見ることがそもそもできなくなる訳です。

 実は、DVDのコピー防止技術の1つに、この「アクセスコントロール」が使われています。CSS(Content Scramble System)と呼ばれる技術でして、DVD-Videoと呼ばれる規格で使われている暗号化技術の1つです。

 DVDソフトを作成する際、コンテンツデータをAという電子鍵(タイトル鍵)で暗号化します。そして、コンテンツデータを復号するのに必要なタイトル鍵(A)はDVDの中に保存されるのですが、そのタイトル鍵(A)も別途暗号化します(この暗号化する電子鍵Bをディスク鍵といいます)。更にこのディスク鍵をCという電子鍵(マスター鍵)で暗号化します。

 DVDプレイヤーがDVDソフトを再生する時、CSS技術に対応したDVDプレイヤーであれば、プレイヤー自身が復号化のためのマスター鍵(C)を保有しているので、順番にディスク鍵(B)、タイトル鍵(A)、コンテンツと復号することができます。ところが、(i)マスター鍵を持っていないDVDプレイヤーだと、結局暗号化された中身しか見えないので、再生できません(スクランブルになります)。また、(ii)内容が暗号化されているためにDVDをコピーすることもできない、という理屈です。

 だから、広い意味ではコピー防止技術といえる(⇒(ii))のですが、本質的には、マスター鍵を持つDVDプレイヤーのみに再生を許す技術(⇒(i))です。ですから、この技術は、コピー防止のため、というよりは、適切な暗号鍵(マスター鍵)を持っていないと見られない、という「アクセスコントロール」の方に該当すると言って良いでしょう(文化庁も同じ見解)。

 なお、業界団体は、メインの目的はコピー防止であり(コピーしたDVDソフトは、技術未対応のDVDプレイヤーでは見られないという点ではコピーしていないDVDソフトと一緒だが、この技術のために、技術対応のDVDプレイヤーではコピーしたDVDソフトを見ることができなくなる)、「技術的保護手段」に該当すると反論しています。

 長くなりましたが、結論的にDVDのコピー防止技術の1つであるCSSという暗号方式を「破って」も、著作権法でいう「技術的保護手段」には該当しないために、著作権法違反にはならない(私的利用のための複製、に該当する)ということになる可能性が高い、と言えます。

CSS以外の主要コピー防止技術は著作権法上の「技術的保護手段」を含む

 しかし、現在ではこのCSSという技術はマスター鍵の流出により、DVDソフトのコピー防止技術の主流ではなくなっています。他にも、有力なところで、(i)CGMS(Copy Generation Management System)と呼ばれるもの(マクロビジョンと呼ばれるものもその亜流)、(ii)CPRM(Content Protection for Recordable Media)と呼ばれるもの、(iii)CPPM(Content Protection for Prerecorded Media)と呼ばれるものなどがあります。

 このうち、(i)CGMSは、データの暗号化ではなく、データにコピー管理情報(コピー不可、1回のみコピー可、コピー自由)を載せて、レコーダー側がその管理情報の内容に応じて、再生をしないということを生じさせるものであり、まさに(1)複製を防止する手段そのもの(コピーしていないDVDはどんなDVDプレイヤーでも見られるが、コピーしてしまったDVDは技術に対応したDVDプレイヤーでは見られない)である「コピーコントロール」であり、著作権法2条1項20号にいう「技術的保護手段」に該当します。

 (ii)CPRMは、CSSの暗号化を基本的に受け継ぎつつも強化した上で、コピー管理情報を載せる技術です。DVD-RAMやDVD-RWなどに使われています。暗号化の部分では「アクセスコントロール」ですが、少なくともコピー管理情報の部分では、「コピーコントロール」ということができるでしょう。従って、少なくとも「コピーコントロール」の部分はやはり「技術的保護手段」に該当します。

 CPRMが記録可能なメディアのためのものでしたが、(iii)CPPMは、再生専用メディアに使われている技術です。やはりCSSの暗号化を基本的に受け継ぎつつも強化されています。またCPRM同様にコピー管理情報を載せています。暗号化の部分だけでいえば「アクセスコントロール」ですが、少なくともコピー管理情報の部分では「コピーコントロール」といえます。従って、少なくとも「コピーコントロール」の部分はやはり「技術的保護手段」に該当します。

 このように、現在の主要なDVDコピー防止技術は、何らかの形で、少なくとも部分的には「コピーコントロール」を含むものですから、これを回避することで「可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製」は著作権法30条1項2号に触れ、著作権法上、著作権者の複製権の侵害となります。

しかし複製が著作権法上違法ではない場合があり得る

 ただここで1つのポイントは、「可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製」の解釈です。

 DVDをパソコンのリッピングソフトを使って複製する場合を考えて下さい。これは一般には、HDDに一旦保存⇒DVDメディア(DVD-RAMなど)という2段階を経て複製されます。

 普通にパソコンのHDDにDVDの内容を保存するのは成功するのに、DVDメディアには焼けないということがあるかもしれません。これは、コピーコントロールが、パソコンにリッピングする場合には働いていない証拠です(全てのコピーコントロールでそうなるという訳ではありません。パソコンにもデータ保存できない場合があるかもしれません)。そのような場合に、リッピング中(パソコンにデータ保存中)にコピーコントロールを外すということができたらどうなるでしょうか?

 これは、別に コピーコントロールを外さなくてもできた複製、ということになるので、そのような複製は、「技術的保護手段」を回避しているけど、30条1項2号にいう例外に該当しないという可能性があります。その場合、最初の複製時にコピーコントロールが外された結果としてHDD⇒DVDメディアへの複製ができるようになったとしても、30条1項2号にいう例外に該当しないと思われます。

 逆にそもそもHDDへもできないリッピングのコピーコントロールをHDDへの複製の段階で外したということになれば、30条1項2号にいう例外に該当し複製権侵害になると思われます。

 従って、全ての「技術的保護手段」の回避が著作権法30条1項2号に該当する「例外」として複製権侵害となる訳ではない、という結論になり得ます。

不正競争防止法は「アクセスコントロール」の妨害も違法とするが・・・

 他方、不正競争防止法は、「技術的制限手段」(「保護手段」ではない)を回避する装置・プログラムの譲渡・引渡・展示・輸出・輸入・電子通信回線を通じて提供する行為を禁止しています(不正競争防止法2条1項10号、11号)。

 こちらは、「アクセスコントロール」も含む(11号)のですが、単にそのような手段を利用することや、譲渡を受けることは規制の対象外であり、上述の複製行為のうち、著作権法上違法とはならないものについては、不正競争防止法上も違法にはならないということになります。

 なお、不正競争防止法上禁止される「技術的制限手段」は、「可能とする機能のみを有する装置」または「プログラム」ですので、使い方によってはアクセスコントロールを回避できる、というレベルのものであれば、そもそも2条1項11号に触れないことも付言しておきます。

まとめ(可能性が高い結論)

 まだまだややこしいと思いますが、一応まとめますと、

「コピーコントロール」 ⇒著作権法上「技術的保護手段」、不正競争防止法上「技術的制限手段」
「アクセスコントロール」⇒不正競争防止法「技術的制限手段」のみ

DVDの複製
・CSSを回避⇒「技術的保護手段」ではないので著作権法上違法ではない
・コピー管理情報の回避⇒パソコンへのリッピングが(特別なソフトを使わなくても)通常可能な状態である場合に、パソコンでコピー管理情報を解除してリッピングソフトを使ってDVDメディアに複製するのは違法ではないが、パソコンへのリッピングができない状態になっている場合に、コピー管理情報を解除してリッピングソフトを使ってDVDメディアに複製するのは違法。

 但し、特にコピー管理情報を解除することについては、争いもあり得ることを十便留意して下さい。

ちなみにアメリカでは・・・

 以上は日本法上の見解になります。アメリカでは、アクセスコントロールの回避も、コピーコントロールの回避も原則として違法となっています(米国連邦著作権法第1201条、この部分を良く「DMCA法(Digital Millennium Copyright Act)」と呼びます。著作権法上の中に規定がありますが、米国ではこれを著作権者の権利というよりは、別の規制であると捉えている方が主流だと思います。)。

 ちなみに、長いですが、連邦著作権法1201条に興味がある方はこちらをご覧ください

Q8 日本のDVD(リージョン2)とアメリカのDVD(リージョン1)の双方が見たいです。「リージョンフリー」なDVDプレイヤーを買うのは違法ですか?

 我が国の著作権法上、違法ではありません。

リージョン・コードとは

 リージョン・コードとは、DVDソフトに付されているもので、例えば日本で市販されているDVDソフトは「2」、アメリカなら「1」、中国なら「6」です。日本で市販されているDVDプレイヤーの殆どはこのリージョン・コードに対応しており、リージョン・コード「2」(及びフリーを意味する「0」)以外のコードを持つDVDソフトを挿入しても再生されません。逆にアメリカで市販されているDVDプレイヤーの殆どではリージョン・コード「1」(及びフリーを意味する「0」)以外のコードを持つDVDソフトを挿入しても再生されません。

 なお、PC上でDVDソフトを再生できるソフトウェアは、このリージョンコードを変えることができますが、一般に3回までといった制限が付されています。

著作権者法上は?

 じゃあ、日本で、リージョン・コードに対応していないDVDプレイヤーをどこかで買って来たとして、それは著作権法上違法なのでしょうか?

 既にQ7でもみましたが、我が国の著作権法では、著作権者が一部の人には見せるが、一部の人には見せないというアクセスコントロールを行うことを著作権としては認めていません。ですから、著作権者側が、「リージョン・フリー」なDVDプレイヤーを排除することはできないのです。しかし、著作権者側と、DVDプレイヤーを製造する側は「一体」ですので(ソニーを見れば分かりますよね?)、なかなか市場に全てのリージョンを再生できる「リージョン・フリー」なDVDプレイヤーが存在しないだけです。

 個人がDVDプレイヤーを買い・使う行為が著作権違反になることはありません。

不正競争防止法は?

 Q7では「アクセスコントロール」が不正競争防止法違反である可能性があることを示しました。そのような装置(リージョン・フリーDVDプレーヤー)の買い手はOKだとしても、作って販売する行為が不正競争防止法違反であれば、実際には誰も販売しません。この点はどうでしょうか。

 たとえば、既存のDVDプレイヤー(リージョン0と2しか再生できないもの)に付け加えたらリージョン1が再生できるようになる装置やソフトウェアは、明らかに「アクセスコントロール」回避のための装置・ソフトですので、不正競争防止法第2条第1項第11号に抵触します。

 しかし、もしも、業者側が最初から全てのリージョンが読めるDVDプレイヤーを発売すれば、どうでしょうか。

 同号が禁止しているのは、『・・・妨げることにより可能とする機能のみを有する装置(当該装置を組み込んだ機器を含む。)若しくは当該機能のみを有するプログラム(当該プログラムが他のプログラムと組み合わされたものを含む。)を・・・譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、若しくは輸入し、又は当該機能のみを有するプログラムを電気通信回線を通じて提供する行為』です。

 ここで問題は「機能のみ」という解釈。全てのリージョンが読めるDVDプレイヤーは、別に「リージョン1」のみが再生できるわけではなく、もともとアクセス制限のない「リージョン2」「リージョン0」と同じように再生できるわけです。とすれば、そのような、「リージョン・フリーDVDプレーヤー」の譲渡や展示等は、不正競争防止法第2条第1項第11号には抵触しないということができます。

結論

 ということで、わが国で「リージョン・フリーDVDプレーヤー」を購入することも、販売することも、いずれも著作権法・不正競争防止法に抵触しません(ただし、リージョンフリー化のみを目的とした機械やソフトの販売等(開発や利用は該当しません)は不正競争防止法に抵触します)。

ちなみにアメリカでは・・・

 アメリカでは著作権法の中でDMCAがあるのですが、アクセスコントロールやコピーコントロールの回避が「主たる利用目的」であれば違法になります。

 この点、「リージョン・フリーDVDプレイヤー」は、一般にはアクセスコントロールが主たる利用目的ではなく、コントロールされている・されていないを問わず、全てのDVDソフトを見たい、という目的の機器ですから、アメリカ国内で「リージョン・フリーDVDプレイヤー」を購入することも、販売することも、米国連邦著作権法第1201条に抵触しないと思われます(ただし、リージョンフリー化のみを目的とした機械やソフトの販売は抵触します)。

 なお、開発行為・利用行為については、わが国と異なり、原則として同法の規制対象である可能性が高いことに注意を要します。たとえば、あるコピーソフトで、シフトキーを押しながら利用すると、コピー防止機能を解除してCDがコピーできる、ということを「発見」した学生が、1201条違反(ただしこれはコピーコントロール違反ですが)で訴えらそうになった、という事件がありました(実際には裁判にはならなかったらしいですが)。

 ちなみに、長いですが、連邦著作権法1201条に興味がある方はこちらをご覧ください

Q9 YouTubeに誰かが日本のテレビ番組をアップロードしています。これを見るのは違法ですか?

 テレビなんて無料で見られるもの・・・それをネットで見たっていいじゃない?と思うかもしれませんが、もちろんテレビ番組も著作物。著作権者・著作隣接権者が放送しているわけですが、彼らの許諾しない複製や公衆送信は、著作権法に違反します。したがって、テレビ番組を自宅で録画することは私的複製としてなんら問題ないのですが、その私的な複製をYouTubeというインターネット上のサーバーに設置することは、公衆送信可能化権(23条1項、99条の2)の侵害ということになります。

 じゃあ、そういう著作権違反の映像を見る行為はどうでしょうか?

 違法に作成されたYouTube上のデータを見る行為自体は、原則として著作権者の何らかの著作権を侵害するものではありません(なお、YouTubeは画像のダウンロードができない設計です)。やや大雑把にいえば、日本の著作権法が、「見せる」(譲渡、実演、展示など)側を規制する法律であって、「見る」側を規制する法律ではないからですね。

 ちなみにYouTubeでは、データがダウンロードできない設計になっています。我が国の著作権法を前提としたら、個人が違法ファイルをダウンロードしても、「私的利用のための複製」に該当して違法ではありません(違法に作成されたファイルであっても、あくまで私的利用であれば違法ではない)が、アメリカでは「私的利用のための複製」というような例外規定はない(フェアユースという例外規定はある)ので、もし違法ファイルがダウンロードされてしまえば複製権侵害になる可能性が残る訳で、そのようなことを防止するためにダウンロードができないようになっているものと思われます。

 ということで、たとえ違法にアップロードされた日本のテレビ番組であっても、見ることだけで違法となる可能性は低いでしょう(我が国では著作権違反ではありません。ただし、特別な事情があって別途不法行為が成立する等の事情があれば別ですし、米国連邦著作権法上はダウンロードだけでも違法となる可能性があることには注意して下さい)。

 ただ、YouTubeはGoogleが買収しましたし、かなり人気になってしまったので、違法な画像がアップロードされることは少なくなるのではないかと思います。我々も「節度」ある著作物の利用を心がけたいものですね。

Q10 昨年(2005年)ソニーがインターネット上で自宅のTV画像を転送して見ることができるサーバーを発売し人気となったと思うのですが、テレビ番組をネットにアップロードするのは違法なのではないのでしょうか?そんな裁判があったような気もするのですが。。。

「ロケーションフリー」テレビの仕組み

 まず、ソニーのシステムがどんなものか、気になる方はこちらをご覧ください。簡単に説明すると、自宅に「ロケーションフリーベースステーション」というコンピュータを置いて、この機械から自宅で視聴できるテレビ放送をインターネット経由で飛ばし、自分のパソコンがどこにあろうと(海外であっても)自宅のテレビを見られるようにしよう、っていうシステムです。別にこのソニー製の機器を使わなくても、テレビ受信をしたい場所にパソコンとTVキャプチャーボードと呼ばれる受信装置があれば、同じようにネット経由でパソコン所在地のテレビを見ることができます。

著作権上の論点

 すでにQ9を見てくださった方はお分かりのように、これは一見、著作物の著作者および放送するテレビ局(著作隣接権者)の公衆送信権(公衆送信可能化権)(著作23条1項、98条の2)を侵害するように思えます。なぜなら、インターネット上にテレビの著作物を流してしまっているからです。

 しかし、自宅に置いて、自分又は家族のためだけに送信する(送信可能にする)のであれば、「公衆」に送信することにはなりません。このロケーションTVでキャプチャーした映像をDVDなどに録画したとしても、通常は「私的利用のための複製」となります。従って、自分・家族で完結する利用法であれば、著作権侵害にはならない筈なのです。

 しかしもし、そういうロケーションフリーテレビを、他人に設置して貰ったらどうでしょうか?  他人を巻き込むことにより、他人⇒自分の送信が「公衆送信」になりはしないか?他人が自分のために複製したとなれば「私的利用」ではないのではないか。そのあたりがまさに論点なのです。

2つの裁判の事案

 このような他人を巻き込んだ場合、近時2つの面白い裁判がありましたので簡単に紹介します。

 まず1つは、「まねきTV」と呼ばれるシステム(http://www.manekitv.com/)についての裁判でした(東京地決平18・8・4)。主に海外居住者向けに上述のソニー製「ロケーションフリーベースステーション」を業者が預かって、その管理を業者側が行うというシステムです。利用者は入会金3万1500円と月額5040円の管理費用を払います。なお、ソニー製のベースステーション・およびそこから発信される画像を見るための特別なソフトウェア(LFA-PC2)が必要になりますが、これは利用者が別途買う必要があります。ベースステーションはユーザーから「まねきTV」に送る必要があります。

 もう1つは、「録画ネット」と呼ばれるシステム(http://www.6ga.net/)についての裁判(知財高決平17・11・15))でした。これは録画機能付きのパソコンを遠隔地のユーザーが操作して、テレビ番組を録画・視聴できるようにしたサービスでした。録画ネットで使っていたシステムは、ソニー製のそれではなく、普通のパソコンにTVキャプチャーボードをつけたものでした。ユーザーは、第三者からではなく「録画ネット」側から「テレビパソコン」(つまりはTVキャプチャーボード+パソコン)を「購入」し(だいたい4〜6万円)、「録画ネット」が設置します。利用者は月額約5000円(49.95ドル)のハウジングコストを払います。

 ほとんど同じシステムなのですが、テレビ局が著作権侵害としてその利用差し止めを求めたのが裁判となりました。前者では、テレビ局が負け、後者では、テレビ局が勝ちました。

 どうしてでしょうか?後者がソニーを使わずに普通の安いパソコンを使ったからでしょうか?

 前者は、「公衆送信権の侵害」をテレビ局側が主張したけど、このソニーのシステムは、専用ソフトがない人はインターネットを介してでも映像を見られないという点をあげることができます。公衆送信権を侵害した、というには、「公衆」に「送信」(ないし送信可能化)しなければいけないのに、公衆に送信されていないじゃないか、というわけです。また、前者では、その機械を実際にユーザーが別途買って業者に送らなければいけないので、あくまでソニー製のシステムはユーザーのもので、業者は場所を貸しているに過ぎない、と認定されました。

 後者は、実は法律構成が違って、著作隣接権としての複製権(著作98条)の侵害をテレビ局側が主張したものです。このシステムで使われたコンピュータは、契約時に業者からユーザーに「売った」ことにされていたのですが、契約終了後に、業者はそのコンピュータのハードディスクの中身を初期化することになっていたこと、また、業者が「買い取る」(他の契約者に譲渡するということにすると利用者負担が軽くなるようになっていた)こともできることになっていたこと等を踏まえると、実態としては「貸した」に過ぎない、という認定がされました。ですから、たとえユーザが遠隔操作で複製をしても、実際にこの複製を支配していたのは業者であって、「私的利用のための複製」にはならない、という判断になりました。

ロケーションフリーテレビの利用において気をつけること

 インターネットを経由してテレビを見るというやり方は、需要があります(私も海外におりますので、日本のテレビがネット経由で見られることはとてもうれしいし、実家でしか見られない広島カープの中継をネット経由で見られたらどんなにうれしいか、と思います)ので、今後も成長を続けると思います。この2つの裁判から「適法」に複製し、また「公衆」に送信することを避けるにはどうすればいいでしょうか?

 1つは、ネットを経由して「誰も」が見られるのは「まずい」ということです。ソニー製の製品は確かに対応ソフトを持っている私的な範囲しか見られませんが、もし自宅のPCとTVキャプチャーで同じような構成を作るなら、たとえ業者に依頼せず自分の実家に設置する場合であっても、必ず厳格にパスワード管理をして、「公衆」からは見れない状態にしないといけません。

 第2に、もし業者のハウジングサービスを利用するなら、業者が「支配」していると言われかねない状況が少ない業者を選ぶ必要があります。パソコンが1人1台ではない、というのは論外ですが、そこで使われるパソコンが、業者から「借りた」ものではなく、自分が当初から「所有して」いるものといえる実態があるかどうか十分検討しなければならないでしょう。契約終了後に業者がパソコンを買い上げることができる趣旨の契約文言があると危険です。

 そのほかにも細かいポイントがありますが、このようなネットTVは、テレビ局らの複製権や公衆送信権を侵害しない形で今後も利用したいものです。

 

Q11 そういえば、例の「ローマの休日」など、1953年公開の映画の著作権の存続期間は、結局50年ですか?70年ですか??

ローマの休日

 こういう新聞記事、ありましたよねえ?
 「ローマの休日」DVDの販売中止要求−米会社、著作権70年延長で

映画「ローマの休日」など2作品の著作権を侵害されたとして、米映画会社パラマウント・ピクチャーズ・コーポレーションは25日までに、DVD製造・販売会社ファーストトレーディング(東京)に2作品のDVDの製造と販売差し止めを求める仮処分を東京地裁に申し立てた。(中略)

 2004年1月1日施行の改正著作権法で、同日以降の公開作品は著作権保護期間が50年から70年に延長にされた。

 2作品はともに1953年公開で、文化庁は同年の作品から保護期間を70年としているが、一部の会社は「53年の作品は03年12月31日に50年の保護期間が過ぎた」として、安価なDVDを製造販売しているという。

(サンケイスポーツ平成18年5月25日付電子版
当時のURLhttp://www.sanspo.com/sokuho/0525sokuho024.html)

著作権は50年?70年?

 もうご存じの方も多いと思うこの事件ですが、取りあえず法的な論点を確認しましょう。

 我が国の著作権の保護期間は、原則として著作者の死後50年です(著作51条2項)。但し、個人に帰属しない団体名義の著作物や、誰の著作物か分からない無名著作物の場合は、原則として公表から50年です(52条1項、53条1項)。映画の場合も、沢山の人が関与するので、誰かの死後という決め方ができないということで、公表から50年、とされてきました(改正前54条1項)。ところが、諸外国(アメリカ、EUなど)が続々と著作権の保護期間を70年とする中で、我が国でも、取りあえず外国の著作物が多く問題となる映画の著作物について、2004年1月1日施行の改正著作権法において、先行的に保護期間を公表後70年に変更しました(現54条1項)。

 ところで、50年とか70年の起算点ですが、公表した日・死亡した日、ではなく、『著作者が死亡した日又は著作物が公表され若しくは創作された日のそれぞれ属する年の翌年から起算』されます(57条)。

 以上から、1953年公開の映画の著作物については、保護期間が50年なら2003年12月31日に保護期間が終了してもはや誰の著作物でもなくなっています。もしも70年なら2023年12月31日に終了であり、著作権がまだ存続していることになります。で、どっちなの?というのがこの「ローマの休日」裁判の論点でした。

 この点、改正著作権法の附則によると、
附 則 (平成一五年六月一八日法律第八五号)

(施行期日)
第一条  この法律は、平成十六年一月一日から施行する。

(映画の著作物の保護期間についての経過措置)
第二条  改正後の著作権法(次条において「新法」という。)第五十四条第一項の規定は、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が存する映画の著作物について適用し、この法律の施行の際現に改正前の著作権法による著作権が消滅している映画の著作物については、なお従前の例による。

 とあるので、施行時である2004(平成16)年1月1日の際に、改正前著作権法において著作権が消滅している映画の著作物については、改正後に、50⇒70年と伸びる訳ではない、とはっきり書いてあります。だから、例えば1952年の著作物であれば、2002年12月31日に著作権が消滅しています。改正で著作権が「復活」する訳ではありません。これは争いがない。

 じゃあ1953年の著作物だって、2003年12月31日に切れる訳で、改正法によっても70年に伸びる訳ではない、これが自然な解釈だと思われるのに、何故著作権者側は仮処分申立したのでしょうか?

接着理論

 実は、文化庁著作権課は、04年1月1日に施行された改正著作権法によって、03年末まで保護期間があった映画は、保護期間がさらに20年間延長された(70年となった)との解釈をとってきていました。「03年12月31日午後12時と改正法が施行された04年1月1日午前0時が接着しているため、改正法が適用される」という説明です。

 これは、同様に50年に延長された1971年施行改正著作権法においての国会答弁において、1970年12月31日に保護期間が終了する著作物についても、50年に延長されると回答された、と解釈し得る答弁をしたことなども根拠となっています。

 しかしどう考えても、この「接着理論」は不可思議この上ないものです。まず第1に、12月31日午後12時と翌年1月1日が接着する、という事実はそのとおりですが、しかし明らかに違う年なのですから、法の文理解釈に反します。第2に、法例の一般的な解釈として、ある日まで有効な法例は翌日の午前0時に失効するものであり、これが「接着」するという理由で翌日もやはり有効、と解釈することはまずあり得ません。

 裁判でも、上記仮処分で、ですが、「接着理論」は否定されました(東京地決平18・7・11)。文化庁の見解については、『従前司法判断を受けたものではなく、これが法的に誤ったものである以上、誤った解釈を前提とする運用を将来においても維持することが、法的安定性に資することにはならない。』(決定書17頁)と明確に否定されています。

 仮処分申立をしたパラマウント側は、この決定を争うため知財高裁に抗告したのですが、取り下げました。おそらく知財高裁で東京地裁の決定が追認されてしまうことにより御墨付きがつくのを恐れたものと思われます。ただ、仮に抗告審の決定が出ていても、おそらくこの明確な決定は覆らなかったのではないでしょうか。

 よって、1953年公開の映画の著作権は、我が国においては、改正法にもかかわらず、2003年12月31日に50年の保護期間が終了したと考えて問題ないと思います。

Q12 無断リンクは違法ですか?

 原則は違法ではありません。

 リンクというのは、著作物を複製・譲渡した訳でもないですし、著作権法上は何ら著作権者の利益を害していないと言えます。そして、リンクをすることについて特に相手の同意を得ていなくても、そもそも相手はインターネット上にその情報を公開している訳ですから、公開されている情報にアクセスしやすくしてあげることそのものには、仮にリンク元の方の同意を得ていない場合であっても、何ら違法性がないと思われます。

 但し、「フレーム」と呼ばれる技術を使って、あたかも自分のページがそのリンク先のページの内容も含むように表示する場合はどうでしょうか?

 つまり、画面上の「リンク」を「押す」と、別のページに完全に切り替わるのではなくて、自分のページの一部として、他人のページが表示されるような場合には、場合によっては、著作権者の氏名表示権(著作19条)・同一性保持権(著作20条)といった著作者人格権を侵害し、または、複製権(著作21条)を侵害する場合もあり得ます。

 従って、「リンク」を設定する場合は、誰がリンク先のページを作っているのか、混同される恐れがないようにすることがとても大事です。それを守っていれば、「無断リンク」だから違法、ということはありません。ただ、ネット上のマナー(ネチケットといいます)として、もしリンクをするなら、一言リンク元の人に連絡してあげる方がより良いことはいうまでもありません。

Q13 ホームページの下の方に(C)マーク(「Copyright (C) 2006 *** All rights reserved」という記載)をときどき見るのですが、これってどんな意味があるのでしょうか?

我が国では法的には無意味

 日本の著作権法上のことでいえば、何の意味もありません。日本の著作権法上、著作権を主張するために何かの表記をしなければならない、ということはないからです(無方式主義)。

万国著作権条約上の効果

 ただ、世界には、著作権を主張するためには、ある様式を求める国もないわけではないです。わが国も加盟する万国著作権条約(Universal Copyright Convention)では、条約が定める一定の様式((C)の記号、著作権者の名及び最初の発行の年を記載すること)を満たす場合に、そのような独自の様式を求める国においても、その国の様式を充足することにしています。

実際は・・・

 しかし現在ではアメリカ合衆国も含め、主要国はみな無方式主義になりました(但し例えばアメリカ合衆国では例外的に著作権上の裁判を提起する場合は著作権の登録が必要となる場合もあります)ので、法的には余り意味はありません。せいぜい、「俺が著作権者だぜい」と主張しているだけです。

 ですから、普通にホームページを作る場合にはこの表記については、余り神経質にならなくていいと思います。気にするのであれば、万国著作権条約に従って、(C)の記号を入れ、貴方(著作権者)の名前を入れ、最初の発行年を記載して下さい。All rights reservedという表記は日本の著作権法はもとより、万国著作権条約上も何の意味もありません。

Q14 最近のブログの中には、朝日新聞や日経新聞などのネット上のニュースをそのまま引用して、それにちょこっとコメントを加えて掲載している人が結構いますよねえー。それって、もともとの引用元(朝日新聞とか、日経新聞)を書かなければ違法ですか?

 おっと、もしかしたら著作権法上の「引用」に誤解があるかもしれませんので、順を追って説明します。

そもそも著作権法上保護される表現かどうか?

 著作物の「創作的表現」を無許可で転載することは、著作権法上、原則として違法(複製権(著作21条)の侵害)です。それが新聞であれ雑誌であれミクシーの日記であれ同じです。確かに、「雑報および時事の報道」(10条2項)は著作権法の保護を受けない著作物となりますが、全ての新聞記事がこれに含まれる訳ではありません。例えば、天気予報や事故のニュースそのものは著作権法上保護されない「雑報および時事の報道」になりますが、事実に対し評価が混じれば「雑報および時事の報道」からは外れる可能性があります。いわゆる記者の署名記事などは、ここに該当しない可能性が高いと思われます。

 ブログ管理者としては、新聞記事を転載する場合であっても、基本的に著作権法上保護されるという前提で取り組んだ方が賢明です。

保護される場合「引用」に該当するかどうか?

 仮に新聞報道が「雑報および時事の報道」に該当しない、つまり著作権法上保護される場合でも、転載が違法とならない場合があります。例外的に違法にならない場合の1つに「引用」(32条)があります。

 『公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない』(著作32条1項)

 ここで引用が「公正な慣行に合致する」ためには、少なくとも貴方が書く文書(引用先)が質的にも量的にも主であって、引用元が従であるという関係がなければいけません。引用元と引用先の文書が明確に区別できることも重要です。また、引用の質・量的な範囲については、「報道、批判、研究その他引用の目的上正当な範囲」でなければならない、言い換えれば、貴方の書く文書の目的と関係のない部分まで引用することはできないということになります。

出所の明示とは?

 ご質問の部分は、この32条1項とは別の、48条に関する部分です。48条1項では、引用する場合は『著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない』と定めます。ですから、例えば朝日新聞から引用するのであれば、『朝日新聞○月○日付朝刊』、といった出所の明示が必要になる訳です。

ブログなどでの「引用」の問題点

 最近のブログ等を見ていると、出所の明示はされているし、引用元と引用先の区別はできているものの、必要以上に長い引用や、引用先の文書つまりブログの主の『創作的表現』が殆どないもの、が少なくありません。このようなブログでも、「雑報および時事の報道」を写しているだけであれば著作権侵害の問題は生じませんが、そうではない著作物を転載している場合は、例えきちんと出所を明示していたとしても、著作権法32条に合致する「引用」ではなく、結果的に、著作権者の複製権侵害を行っている可能性があります。

Q15 ブログに書き込まれたコメントを勝手に消すのは、大丈夫でしょうか?別に名誉毀損やプライバシー侵害をするようなコメントじゃないのですが、ちょっとウザイので。。。

 こういう視点で書かれた文書を見たことがないので、他説を知りません。もしもご存じの方は教えて下さい。。。

「コメント」の著作権

 あなたが書いたブログには、あなたに著作権があります。

 ところでその「コメント」欄に他人が書き込めるようになっていますね?勿論「コメント欄」を使わない設定にもできますが、どうせなら他人のコメントを貰いたいもの。使う設定にしている人が多いでしょう。

違法なコメント

 違法性があると思う「コメント」に気付いたら削除して問題ありませんし、削除すべきです。

 そのような「コメント」が、名誉やプライバシーを侵害するなど、不法行為と言える場合、そのブログを管理するあなたが削除するのは何ら問題ありません(なお、ブログの管理者は、いわゆる「プロバイダ責任制限法」(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)における「特定電気通信役務提供者」(同法2条3号)に該当しますので、書き込みを放置しても、そんな書き込みに気付いていなかった場合は、被害者に対し損害賠償の必要もありません(3条1項1号))。

 書き込みを削除しても、その書き込みが被害者の名誉やプライバシーなどを侵害すると信じても良いような状況があれば、実際は侵害していない場合でも、書き込みをした人に対し損害賠償の必要はありません(3条2項1号)。

 なお、書き込み削除について、違法な表現かどうか確信がもてない場合でも、@被害者側から、侵害情報、その理由を示して送信防止措置(削除など)の申し出があったとき、A管理者側が、書き込みした人に対し、そういう申し出があったことを示して、送信防止措置(削除など)を取ることに同意するかどうか照会した場合、B書き込みした人から7日経過しても回答がなければ、削除しても削除により書き込みした人に生じる損害があるとしても賠償の必要がない、ということになっています(3条2項2号)。

 さて、プロバイダ責任制限法3条2項の規定があるということは、逆に考えると、ブログ管理人が違法ではないコメントを削除する結果として、書き込んだ人に対し損害賠償の義務が生じることが「あり得る」ことを示すものともいえるでしょう。じゃあ、どういう時が損害賠償になるのでしょうか。もう少し考えてみましょう。

違法ではないコメント

 「コメント」が名誉もプライバシーも著作権も侵害していないことが明らかだけど、あんまりにも内容的にブログの趣旨に合わなかったり、何か変な勧誘のような内容だったらどうでしょうか。ブログの管理者としては邪魔だから削除したいが、書き込みした人の表現の自由および著作権の制限となるような削除が、違法と評価される可能性はないのでしょうか?

 まず第1に、著作権が成立しないコメントは、削除しても著作権法上は何ら問題ありません。著作権が成立するコメントとは、「創作的表現」である必要があります。ですから、たった2,3行のコメントであれば、そもそも著作権が成立していません。長文であっても、単なる「書式」や「謳い文句」といったレベルのものであれば、著作権は成立していません。著作権が成立していない表現であっても、なお「表現の自由」の保護を受けると考えられますが、本来的に「表現の自由」とは対国家権力に対するもの。個人のブログに関し他人が「表現する自由」なんて、著作権も成立していないようなレベルの表現であれば、保護に値しません。そういう場合であれば、違法な表現でなくても、ブログの管理者は自由に削除できます(削除しなくても問題ありません)。

 著作権が成立しないようなコメントであれば、自らが管理するブログにおいてこれを削除しても、他の不法行為その他の理由によって民事上違法となることもまずないでしょう。

 問題は、著作権が成立する、つまりは「創作的表現」となっている、違法ではないコメントです。

 さて、ここで考えて欲しいのは、違法ではない著作権のあるコメントを削除する場合に、書き込みした者のいかなる権利を侵害するか、です。

 書き込みした者の公衆送信可能化権(当該著作物をネット上などで見られるようにする権利)を侵害するでしょうか?書き込みした者のコメントと同内容を自ら別途ブログで発信すれば公衆送信可能化権の侵害になります。しかし、当該ブログに何の権限もない書き込みした者が公衆送信可能としたコメントをブログ管理人が削除するだけでは、公衆送信可能化権の侵害にはなりません。

 考えてみると、著作権という権利は、第三者による著作物の積極的利用(譲渡、公衆送信、展示・・・)を著作権者が支配する権利であり、著作権者は、第三者による積極的利用を許さないということを求めることはできますが、自らの利用を物理的に第三者から制限された時に、著作権を根拠としてこれを違法とすることはできないように思われます。例えば、創作した芸術的価値ある「つぼ」を展示していたところ、展示するスペースを善意で貸してくれていた人がもうこれ以上貸せない、と言ってきた結果、展示ができなくなったとしても、これは著作権侵害とは無関係の問題です。或いは、ある文学者が売っている本を受領した者が破ろうが焼こうが、かかる行為が名誉毀損等不法行為を構成することがあり得ることは別論、著作権侵害となることはないでしょう。私たちがいま論じていた「ブログ」は、スペースが目には見えないし、本のように手にとって破くことができないので分かりづらいですが、ここに書き込まれた「コメント」を削除するだけでは、たとえそのコメントが著作物であっても、何の著作権も侵害しないと言えるでしょう。

 但し、第1の場合と異なり、著作権が成立するコメントについては、著作者人格権も成立する訳ですから、適当に「まずい表現」だけを削除して他を残す、というやり方をもしすれば、「同一性保持権」(20条)の侵害になる可能性がありますので、この点は留意すべきでしょう。

 よって、ブログ管理者による単なるコメントの削除は、それが著作権で保護される創作的表現であっても、著作権法上違法ではありません(不法行為になる可能性は0ではありませんが、相当例外的な場合と思われます)。

Q16 最近、ときどき裁判をやっている当事者が裁判の書類をネット上で公開しているのを見かけます。裁判書類は公開しても良いものなのでしょうか?

裁判に関する著作権法上の特則のおさらい

 裁判の「対審および判決」は公開されています(憲法82条)。しかしだからといって全ての裁判「書類」が公開されている訳ではないので、この憲法上の文言のみをもって、裁判書類を公開しても問題ない、ということはできません。

 他方著作権法では、『憲法その他の法例』(著作13条1号)や、『裁判所の判決、決定、命令および審判ならびに行政庁の裁決および決定で裁判に準じた手続により行われるもの』(13条3号)については、著作権法上の保護を受けないと規定しています。

 『裁判手続のための利用』であれば、裁判当事者は自由に著作物を複製できます(42条)が、これはあくまで裁判手続のための利用に限ったものであり、ネット上で裁判書類を公開することが「裁判手続のための利用」に該当しないことは明らかです。

とすると・・・

 ですから少なくとも、「判決」等の最終書類については、これをネット上で公開しても著作権法違反にはならない訳です。但し、判決文にはプライバシーや名誉毀損、秘密漏洩になり得る情報が入っていることがあります(ですから最高裁ホームページで公開されている判決文も、若干ですが情報が修正されています(例えば当事者の名前など))ので、そのまんまネット公開することは、不法行為になる可能性を残しています。

 判決以外の裁判書類ですが、著作権で保護される文書については、ネット上で公開すれば原則として公衆送信可能化権(23条)を侵害することになります。ただ、裁判書類の全てが著作権で保護されている訳ではないので、著作権で保護されていない文書であれば、著作権法違反にはなりません。

 だから何でも公開していいか、と言われたら少し違います。既に判決書について述べたとおり、プライバシーや名誉毀損、秘密漏洩になり得る情報が入っているものを公開すれば不法行為になる可能性があります。仮にそのような情報を含んでいないとしても、当事者間の合意や、法が定めた利用方法に違反する態様でネット上で公開する場合は、信義則その他に反し違法となる場合があります。

 例えば、株主代表訴訟の当事者(原告)が、代表訴訟に利用する目的を告げて会社から入手した取締役会議事録11通をネット上で公開した事案では、『書面の提出者等の承諾を得ることなく,これをインターネット上で公開し,極めて広範囲の一般人がだれでも閲覧又は複写(ダウンロード)し得るような状態に置くようなことは,当該手続を非公開とした前記法規の趣旨,目的に反するとともに,書面を提出した当事者の信頼を著しく損なうものであって,信義則上許されないものといわなければならない。』として110万円の損害賠償を認めた第1審の判決を是認しました(大阪高判平17・10・25)。

判決以外はやめておいた方がいい

 判決は裁判所が作る文書ですが、他の文書は当事者・関係者の誰かが作成するもので、著作権が成立する可能性のある文書です。いかに「真実を明らかにしたい」と思う場合でも、ブログ等で裁判書類をアップロードせずに自分の文書として書けば足りる訳で、敢えて他人の権利侵害の可能性を秘める裁判文書の公開までをやるのは、不法行為になる可能性を秘めた危険な行為ということができます。やるなら関係者の許諾を得るべきです。

 関係者の許諾が得られないなら、判決以外はやめておいた方がいいと思われます。判決をアップロードする場合も、上述のとおりなおプライバシーや名誉毀損等の危険がありますので、慎重にされた方がいいでしょう。

Q21 定食屋を経営しています(座席数24席)。野球中継などTV放送を流すのは違法だと聞いたことがあるのですが、本当ですか?ラジオはどうですか?

公衆送信権の侵害?

 お店で、みんなで、テレビを見たい!しかしそれは著作権法上どういう位置づけになるのだろうか?

 テレビ放送については、著作権者に著作権があるほか、実演家・放送事業者に著作隣接権があります。
 結果として、その放送権(公衆送信権の1つ)は、著作権者・放送事業者に属する訳です(著作23条、99条の2)(実演家にも公衆送信権がありますが一度放送事業者に放送を許諾すればその放送について再度の許諾をする権利はありません)。

 この結果、ふつうの一般人がテレビを見ることは何ら制約されないのですが、テレビ放送を受信する側が、テレビなどを用いて他人に「見せる」(公に伝達する)という場合は、彼らの公衆送信権の侵害となる可能性があります。

営利を目的としない上演等

 しかし、我が国の著作権法上、ここに重大な例外があります。「営利を目的としない上演等」(著作38条)です。
 テレビについていえば、(1)営利を目的とせず、(2)聴衆・観衆から料金を徴収しない場合には、著作権者・著作隣接権者の許諾なく、自由にテレビを見ていい(38条3項第1文)。

 更に、『通常の家庭用受信装置を用いてする場合も、同様とする』(38条3項第2文)
 これはつまり、営利を目的としていても、通常の家庭用受信装置で伝達する場合であれば、著作権者・著作隣接権者の許諾なく、自由にテレビを伝達して良い、ということになります。

どんな場合なら38条3項が適用される?

 例えばワールドカップの時に話題となった「スポーツバー」として、まさに特定の試合を見せることを積極的に宣伝している場合で、客の方もそれを見に来ることを第1の目的としてやっている場合であれば、たとえ入場料が0円であっても、「営利を目的とする」ことになり、38条が適用されず、原則に戻って公衆送信権の侵害となると思われます。

 逆に、例えば、「ヨドバシカメラ」などテレビ屋でテレビを放送している場合は、単に商品を陳列しているだけで、たまたまテレビを見ることができても、公衆送信を目的とはしていないことが明らかですから、38条3項第1文の適用が認められ、著作権侵害はないと思われます。

 また、勿論、友人宅、学校、公民館などに集まって入場料を徴収せずにみんなで見るという場合は、38条3項第1文が適用され著作権侵害は生じません。

 他方、38条3項第2文によれば、「家庭用受信装置」を使う限りにおいて、「営利」であっても、「料金徴収」であっても、著作物を放送・有線放送することが著作権侵害にはならない、ということになります。

 例えば、まさに本件のような定食屋さんやカフェが、普通の「家庭用受信装置」でテレビを流すのは、定食屋さんやカフェは営利目的でなされている訳ですが、著作権法上違法ではないということになります。

 なお、以上の点はテレビではなくラジオであっても同様です。

大画面の場合

 以上から著作権法38条3項が適用され、「営利を目的としない」として許諾のないテレビ放送が著作権侵害ではない、と認められる場合であっても、『影像を拡大する特別の装置を用いてその放送を公に伝達する』場合は、放送事業者(テレビ局)の許諾が必要です(100条)。従って、たとえ公民館や学校で完全無料でテレビを見る場合でも、そのような影像を拡大するようなテレビを使う場合は、結局許諾が必要ということになります。

まとめると・・・

★テレビの3基準★

(1)「家庭用受信装置」⇒38条3項第2文適用で放送に違法性がない
(2)「家庭用受信装置」ではないが、「影像を拡大しない」⇒38条3項第1文適用で、無料・非営利なら放送に違法性なし
(3)「影像を拡大する特別の装置」⇒100条で常に放送事業者の許諾が必要

 じゃあ、この(1), (2), (3)の区分はどうなっているのでしょうか。何も具体的な基準や判例がないのですが、次のように考えてはどうでしょうか。

 我が国の著作権法は、TRIPS条約やBerne条約(Berne Convention Art. 9(2), TRIPs Art. 13)に合致するように作られている筈であること、米国連邦著作権法110条第5項が「55インチ」までのテレビであれば営利のお店に置いても著作権侵害がないと定めていたのですが、これが上記条約違反であるとWIPOに認定されていることからすれば、1つの基準として、(1)と(2)の境目は、少なくとも55インチよりは小さい筈ではないか、と考えることができるかもしれません。

 (2)と(3)の場合は、我が国の著作権法の文言によると、「拡大」するかどうかが1つのポイントかもしれません。そういう意味では、プロジェクタを使う場合は、明らかに(3)に属することになりそうです。しかし大型の液晶やプラズマテレビの場合は、特別に拡大する訳ではないので、(2)に留まるかもしれません。

Q22 カフェを経営しています。洒落た音楽をCDなどを使って流したいと思うのですが、違法ですか?

 Q21はテレビ放送を流す、という質問でした。こちらは、「CDなどを使って」ということですので、(i)CDを使うこと、(ii)有線放送やFMラジオを使うこと、について考えてみましょう。

(i)著作権で保護されたCDを使う場合は駄目

 第1に、そのCDが著作権で保護されるCDかどうかが問題となります。現在の我が国の著作権の保護期間は50年ですので、2006年現在では、1955年までに発表された音楽については、2005年12月31日で著作権が切れているので、例えばモーツァルトのCDは、誰がCDを流しても誰の著作権も侵害しない訳です。

 著作権が切れていないCD、例えば「浜崎あゆみ」のアルバムを流す、というのはどうでしょうか。

 著作権者(作曲家など)には「演奏権」(22条)という権利があります。ですから、原則として著作権者の許諾なく店内でCDを流すのは、演奏権の侵害となる訳です。なお、そのCDには、実演家(「浜崎あゆみ」)やレコード制作者(「エイベックス」)も著作隣接権という権利があるのですが、この著作隣接権は「演奏権」には及ばない(ネットで流す時など「送信可能化権」などには及ぶのですが・・・)ので、実演家・レコード制作者の許諾を取る必要はありません。

 ちなみに、話が少し前後しますが、モーツァルトの音楽の場合著作権はもう切れているといったのですが、著作隣接権は切れていない可能性があります。というのは、実演家の著作隣接権の保護期間はまさにその演奏がなされた時からスタートし、レコード制作者の著作隣接権の保護期間も、その録音がなされた時からスタートするので、例えば2005年に演奏・CD製作された著作隣接権は、たとえモーツァルトの音楽であっても、浜崎あゆみの音楽であっても、2055年の12月31日まで著作隣接権が保護されるのです。だったらモーツァルトの音楽のCDだって、最近録音されたものは自由に使えない?かといえば、いま触れたように、実演家やレコード制作者は「演奏権」を持たないので、いつ録音されたものであっても、モーツァルトの音楽であれば、自由にCDを流すことができるということになるのです。

 さあ、話をモーツァルトのCDから浜崎あゆみのCDに戻しましょう。

 仮に著作権者の「演奏権」の侵害になるとしても、既にQ21で触れた「営利を目的としない上演等」(38条)によって、店内放送OKにならないでしょうか?

 ここで気を付けたいのが、先ほどQ21で触れた38条3項は、公衆送信権の一部である「放送」「有線放送」の場合にだけ適用されます。「演奏」の場合は、38条1項が適用されます。1項と3項では何が違うかといえば、第1には、先ほど触れた「家庭用受信装置」で流す場合だったら営利でも著作権侵害にならない、という規定がないのです。

 38条1項では、(a)非営利、(b)入場料なし、(c)演奏する側に報酬を払わない、という3点が揃った場合のみ、著作権の侵害にならない、という規定になっています。従って、本件のようなカフェ=営利では、著作権で保護されたCDを著作権者の許諾なく使ってはいけない、ということになるのです。

 ちなみに、実は平成11年まで、適法に製作されたCDやレコードを流す(演奏する)のは、例え営利であっても、著作権侵害にならないとなっていた(改正前附則14条)のですが、この規定は廃止されています

(ii)有線放送やFM放送なら?

 有線放送やFM放送を流すというのは、著作権者・著作隣接権者の公衆送信権(放送権・有線放送権)を原則として侵害することとなります。ところがこの場合は、テレビ同様に「家庭用受信装置」で受信する場合は、例え営利であっても、著作権・著作隣接権の侵害にはならない(38条3項)ので、カフェ=営利であっても、著作権で保護された音楽の有線放送やFM放送を、著作権者や著作隣接権者の許諾なく流すことができる、ということになるのです。

有線放送やFM放送をダビングしたものを流す場合は??

 有線放送やFM放送が「家庭用受信装置」で流す限りは、カフェで自由に使えるからといって、これを空のCD・MD・DVDなどにダビング(複製)して流す場合も自由か?とは言えないのが辛いところです。

 ダビングということになれば、まさに著作権者・レコード制作者・放送事業者の複製権(21条、96条、98条)および実演家の録音権(91条)を侵害することになります。そして、カフェがカフェのためにダビングするという行為は「私的利用のための複製」(30条)にもなりません。結果として、このダビング行為自体が著作権法違反ということになります。

コンビニを思い出そう

 そういえば、コンビニで流れている音楽はいっつも「有線放送」だよねえ。CD使わないよね。それは、有線放送だったら、「家庭用受信装置」だったら著作権侵害にならないからなんだよね。

Q23 バーを経営しています。お客様にカラオケができるようにして貰うと思うのですが、利用料を払う業者のやつではなくて、自分でマイクと音楽を揃えようと思っています。お客様からカラオケのための特別な代金は徴収しません。違法ですか?

とりあえず答えから

 取りあえず答えから言えば違法です。結構争われた有名な裁判があるんです。

何が問題??

 既にQ22で見たとおり、カフェなどが「営利」事業が店内でCDを流すのは、「上演権」(22条)の侵害となり、かつ、38条でも救済されないのです。だから簡単に店内の無許可カラオケは違法か?と言われると、少し単純にCDやレーザーディスク等を流すのとは違う事情があります。何故なら、カラオケは、お客の要求に応じてCD・レーザーディスク等を流し、お客が歌う訳です。このようにCD・レーザーディスク等を使うことも、曲を歌うことも全てお客単独で行われているとしたら、しかも、それが特に対価を取られずに行われているとしたら、お店としては著作権侵害をしていない、お客も、非営利・無償でCD・レーザーディスク等を使っているから38条で救済される、と考える余地がある訳です。

カラオケ事件最高裁判決(最判昭和63年3月15日

 このような場合(但し事案は附則14条削除前⇒Q22参照)において、最高裁は、そんなカラオケを行う店の経営者は、『客による歌唱につき、その歌唱の主体として演奏権侵害による不法行為責任を免れない。』と判示しています。客がやっているっていっても、やらせたのは実質的にはお店だ、という判断ですね。ちなみにこの判断は、日本における最初の著作権侵害の「間接侵害」を認めた判例として、後の裁判に非常に大きな影響を残しています。

 まあ、カラオケをやりたいお店は、ちゃんと著作権問題が生じないよう許諾を取ってやろう、ということですね。

Q24 京阪電鉄の特急・K特急の3000・8000系車両には「テレビカー」が搭載されているのですが、これは著作権法上、特別な利用許諾を得たりしなくてもOKなのでしょうか?

38条3項第2文の問題

 既にQ21で詳細に回答したとおり、「家庭用受信装置」を使ってテレビ放送する場合であれば、たとえ営利目的であっても、我が国の著作権法上、著作権侵害にはならないことになっています。京阪電車のテレビは、まさに普通の「家庭用受信装置」であることが明らかですから、テレビ局などから許諾を得ていなくても、テレビ放送することができます。

 そうです、だからテレビがあんまり大きくないんですよ(たぶん20インチくらいですよねえ?)。あんまり大きくして「家庭用受信装置」ではないと言われると著作権違反になりますので。

Q31 最近「赤本」を解いていると、国語の問題文が欠けていることがあります。著作権の問題だと聞いたのですが、著作者の傲慢ではありませんか?

問題の所在

 実はいま、大学入試の過去問である『赤本』を発行している会社が、一部の「文豪」に訴えられています。理由は、「文豪」の許諾を取らずに国語の入試問題を転載した、従って著作権を侵害した、というものです。その結果、ついにセンター試験ですら、『赤本』にのらなくなった、とのこと。

入試への利用は著作権侵害ではないが・・・

 そもそも『赤本』に載っている国語の問題は各大学や大学入試センター試験の「入試問題」です。著作物の入試への利用については、著作権者の許諾を得ず私用しても著作権侵害にはなりません(36条1項)。これは、事前に許可を得れば、「入試問題」がバレてしまうかもしれないことを恐れたものでもあります。このように入試に使われる場合は、無償で行えますが、この入試問題の複製・ネット送信について、営利で行う場合は、補償金を著作権者に支払わなければいけない、とされています。

 つまり、『赤本』は営利で大学入試問題を複製しているのであるから、補償金を支払わなければならないというのは、法的には確立した理屈なのです。

ただ・・・個人的には・・・

 今まで「文豪」たちは長年『赤本』に文句を言っていなかったと思うんですよねえ。最近の裁判の流れに従って権利行使したんだとは思いますが、今まで黙認してきたわけですから、権利の濫用である気がします。

 特にここで「補償金」が何故得られるかとえば、その「文豪」の文書そのものに価値が出たのではなく、あくまで「入試」に利用されたことそれ自体に価値が出た訳です。「赤本」に利用されたのは決して「文豪」のお手柄ではない訳です。しかも「赤本」に載らないで困るのは、結局は子供達です。我が国の国語です。少しでも安く「赤本」を販売して欲しいです。

 なので、立法でもう少し権利を狭くしても良いような気がします。

Q32 ピアノ教室を経営しています。ピアノの発表会をやるのですが、楽譜や歌詞を来場者にコピーして配布するのは問題ありませんか?発表会来場は無料としますが、当然発表者は私の生徒ですので、私に月謝を払っています。

保護された著作物の演奏であれば・・・

 まず、著作権侵害があり得るかどうかが問題ですね。

 例えばショパンの曲を演奏するなら、もう著作権の保護期間が切れているので、自由に楽譜や歌詞を配ってもなんらの権利侵害にならない訳です。

 ところがもし、この演奏が「浜崎あゆみ」の曲なら著作権で保護されている曲ですので、許諾なく公に演奏すれば演奏権(22条)侵害、また許可なく楽譜や歌詞を複製すれば複製権(21条)の侵害となり得るのです。

演奏権侵害の例外

 もっとも、既に何度か出てきた38条(営利を目的としない上演等)によって違法ではない可能性もあります。本件では38条1項が関係しまして、(i)非営利、(ii)料金なし、(iii)出演者に報酬なし、であれば、違法になりません。

 本件では、ピアノ教室自体は有償ですが、(ii)このイベント自体は無償です。(iii)報酬もないと思われます。そして、ピアノ教室での月謝はあくまで教室の指導に対する対価であり、ピアノ教室は営利ですが、このようなイベントは全体として非営利・無対価であると判断しても良いと思います。

楽譜や歌詞

 楽譜や歌詞のコピーについては、38条の適用がありません。このようなイベントへの利用は、たとえ非営利でも「私的利用」とは言えませんので、「私的利用のための複製」として正当化されることもありません。また、民間のピアノ教室の場合、「学校その他の教育期間における複製」(35条)として複製が正当化されることもありません。結果として、著作権の保護がある楽曲の楽譜や歌詞のコピーは、著作権侵害となりますので、許諾を取るか、控えるべきです。

Q33 学祭で素人がモー娘。の歌を歌うのですが、なんか問題ありますか?ちなみにこのコンサート自体は無料ですが、学祭自体の入場料が外部者の場合200円かかります。

演奏権の侵害?

 既にいくつかのQでも出てきたとおり、著作権者の許可なく「公衆に直接見せ又は聞かせる目的で」音楽を演奏したり歌ったりすることは、原則として演奏権の侵害となります(著作22条)。

 しかし、「営利を目的としない上演等」(著作38条)に該当すれば、許可がなくても違法ではありません。その要件は、(i)非営利、(ii)無料、(iii)無報酬です(38条1項)。

 本件では、(i)学祭での上演であり非営利、(iii)出場者に報酬はおそらくないだろう、といえそうですが、(ii)コンサート自体は無料でも、入場料を徴収していることからなお38条1項の例外に該当するのかが問題となります。

無料の意味

 この点38条1項は、(ii)無料とは、『聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合』と定義しています。ここで、200円の入場料が、その上演の対価かどうか、ですが、例えば、200円の徴収目的も、学祭で必要となる経費の補填が目的であれば、著作物そのものへの対価ではない訳ですから、この38条1項でいう「料金」を徴収しているとはいえず、違法ではなくなると考えられます。

Q34 図書館が保有しているDVDやビデオの映像を図書館で無料で見られるサービスがあるのですが、これは著作権法上オッケーなのでしょうか?なんかビデオレンタル屋で借りてくるのが馬鹿らしくなってしまうのですが。

何が問題?

 図書館には多数の書籍が置いてありますが、ここには、普通レンタルすれば良いお金を取られるであろう最新の漫画や、最新のDVDソフトもあったりするのです。

 更に、図書館の中には、DVDソフトを見るためのテレビとDVDプレイヤーまで置いているところもあります。ということは、公共の図書館が、無料の映画館に化すところもあるわけです。

 しかしそんな無料で映画が見れてしまうと、映画館やレンタルビデオ屋さんで利益をあげたい著作権者の利益が損なわれてしまいます。

 そもそもそんな無料映画館のような図書館って、著作権法上適法なのでしょうか?

原則は上映権の侵害だが・・・

 著作権者は、著作物を公に上演する権利を専有します(著作22条の2)。従って、図書館のような公共スペースで著作権者の許諾なくDVDソフトを上演することは著作権者の上演権を侵害する行為です。

 しかし既に何度か出ているとおり、それが無償で行われる場合は、「営利を目的としない上演等」(著作38条)の例外によって、例外的に違法ではない場合があります。上演権については、38条1項が適用され、(i)非営利、(ii)無料、(iii)出演者に報酬支払いなし、の要件が満たされるなら、違法ではないということになります。

 公共の図書館の場合、これら3要件を満たすことは通常明らかです。従って著作権法上、図書館の行為は全く適法だと言えます。

将来は・・・

 しかし、このような図書館の行為の影響力を危惧した著作権者側は、権利者の経済的利益を侵害しないよう、法改正ないし図書館側に任意に一定の金員を支払うことを要求しています。特に海外の著作権者は、非営利・無償で行われるから上演しても良い、という理屈は理解し難いという感覚をもっているので、このような要求が強まってくることが予想されます。図書館が無料映画館であるのも、長くはないかも知れません。ただ、もしもこれが無料でなくなるのであれば、個人的に思うのは、日本は映画のチケットが高いので(アメリカでは10ドル以上で映画を見ることはありません)、抱き合わせて映画のチケットを安くして貰いたいものです。著作権者に権利ばかり主張されては消費者としては辛いですねえ。

Q35 塾を経営しています。塾で問題集や教科書をコピーして、適当に空欄をつくったり問題を変えたりして作成したオリジナルの問題を生徒に対し実施したりするのですが、著作権法上なんか問題がありますか?

何が問題?

 「オリジナル」を作っている、と仰いますが、その「オリジナル」はもともと他の著作物をメインにして変更したものですね?そうだとすれば、このような改変は、たとえ貴方の改変した作品(問題)が著作権法上保護されることがあるとしても、「二次的著作物の利用」ということになり、原著作物、つまりは、もともとの著作権者の許諾がなければ、そのような利用をすることはできないことになります(著作27,28条)。

 このようなもとの著作物を少し変えて利用することを、「翻案」というのですが、「私的利用のため」であれば、例外的に許諾なく行うことができます(43条1号、30条1項)し、学校等であれば、授業の家庭における利用のためであれば、例外的に許諾なく行うことができます(43条1号、35条1項)。

 そこで、このような問題の作成と塾における利用がこれらの例外に該当するのかが問題です。

塾≠学校等

 まず、一見例外に該当しそうな35条1項の方から検討します(43条1号と併せて読むことで、下記の「複製」は「翻案」と読み替えられます)。

 35条1項本文は、『学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる』と定めます。ここで注目すべきなのは、営利である機関が除かれていることです。従って、通常の塾であれば、「営利」性故に35条の例外に該当することが否定されてしまうでしょう。

 ちなみに、河合塾や代々木ゼミナールが利用するのはどうでしょうか?

 民間の塾ではありますが、これらの塾は、私立の中学・高校同様、「学校法人」という法人格を取得しています。学校法人というのは、税務上も非営利法人として認識され、その設立には文部科学大臣または都道府県知事の認可が必要です(私立学校法30条など)。その他その公的規制や公的性質を考慮すれば、塾であっても、学校法人であれば、著作権法35条にいう「教育機関」に該当すると思われます。なんとなーく、少し不公平ですね。

35条但書

 なお、学校法人につき、35条本文で複製・翻案が許される場合であっても、『当該著作物の種類及び用途並びに当該公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない』という規定があります(35条但書)。あるガイドラインによれば、授業で使う教科書の複製や翻案は違法ではないが、参考書や市販の問題集の複製・翻案は、この但書により「この限りではない」つまり適法にならない、と解説しています。一理あるとは思いますが、これは著作権者に有利に解釈しすぎであるきらいがあると思われます。他の30条以下の著作権侵害の例外との衡量からすれば、単純に教科書ならOK、参考書なら駄目というのではなく、部数や程度なども勘案されるべきだと考えます。

私的利用のための複製?

 これは塾の経営は営利と見なされますので、これで正当化することは不可能でしょう。

つまり・・・

 学校法人で行われない限り、そのような「オリジナル問題」を作成し頒布することは、著作権者の翻案権の侵害となり、著作権法上違法となると思われます。

Q81 2ちゃんねるで匿名の書き込みで私の名誉が毀損され、プライバシーが侵害されました・・・でも、微妙に私本人の名前は明らかになっていないんですが、でも会社の人間なら私だって分かります。こういう場合、@削除してもらえますか?A誰が書き込んだか開示されますか?

 そもそも削除とか、書き込みした人(発信者)の情報を開示せよ!というには、前提として、プライバシー侵害や名誉毀損、著作権侵害などの違法な書き込みがなされていることが必要ですがここでは何らかの侵害があることを前提に話を進めてみます。

削除の要求のやり方

 まず、一刻も早く「2ちゃんねる」に書き込まれた情報を削除したいと思う場合、どんな手段があるでしょうか?  この点、「2ちゃんねる」では、「削除掲示板」というのがあるので、ここで任意の削除を要求します。ただ、「2ちゃんねる」の削除ガイドラインは、法律家が見て「プライバシー侵害」「名誉毀損」となるかならないか、とは少し異なるガイドラインを採用していること、削除する人がまったくのボランティアで、その運用もやや曖昧であることから、任意に削除されるかどうかは、運のようなところもあります。特に、「削除掲示板」自体が掲示板なので、ここに書かれた内容をもとに「祭り」と呼ばれる「荒し」が始まることもしばしばです。

 特に気を付けたいのは、全くのプライベートな人(ガイドライン上の三群)なら比較的削除されやすいのですが、一群や二群に分類されると削除されずらいということです。そして、意外にも全くの私人でも「二群」に分類されやすい。二群とは、『板の趣旨に関係する職業で責任問題の発生する人物、著作物or創作物or活動を販売または提供して対価を得ている人物、外部になんらかの被害を与えた事象の当事者』と定義されているのですが、例えばある会社の不祥事らしきことを暴露する書き込みなら、当然その会社に関係あるスレッド(掲示板)に立てる(書き込まれる)ことになるので、絶対に三群にはならない訳です。

 じゃあ、任意削除以外にどんなやり方があるか、ですが、いわゆる「プロバイダ責任制限法」に基づき制定された名誉毀損・プライバシー関係ガイドラインに基づく所定の削除要求をすることが1つの方法です(書式はガイドライン37頁)。但し、一般に報道されているとおり、このような要求を「2ちゃんねる」管理人のひろゆき氏相手に行っても、余り効果がないことが多い。私も住民票上の住所に送付したことがありますが、全くダメでした。

 駄目な場合、裁判で求めることになりますが、裁判(仮処分を含む)で勝っても、本人が出てこないので実効性がないことが多いです。

 最近注目されているのは、法務省経由で要請すると比較的効果があることがあるようなことが言われています。上記ガイドライン38頁に書式がありますが、最近は掲示板の名誉毀損・プライバシー侵害について、法務省経由でプロバイダに要請する運用が始まっています。これは、プロバイダ側としても「公的要請に応える」結果として削除等ができるので、非常に使い勝手が良いようです。2ちゃんねるの削除要求については、削除掲示板でうまくいかない場合は、実務上はこの方法にチャレンジして下さい。これなら弁護士なしでも一般個人にもできるかもしれませんしね。

開示請求のやり方

 書き込みをされた被害者としては、書き込んだ奴に損害賠償請求をするために、一体誰が書き込んだのか、知りたいと思うでしょう。しかし、「2ちゃんねる」など掲示板は、匿名で利用されるもの。訴えを起こしたくても、名前も住所も分かりません。

 そこで、2ちゃんねるの保有している情報を1つの契機として、本人を探し当てる「発信者情報開示請求」を行うことが考えられます。

 具体的には、次のような流れになります。

(1) 「2ちゃんねる」(など掲示板管理者)に発信者情報の開示請求を行う

   ↓

  「2ちゃんねる」は保有する発信者のアクセス情報(発信者のIPアドレスなど)を被害者に開示

   ↓

(2) 「IPアドレス」から判明した、発信者が利用していたプロバイダ(「経由プロバイダ」)に再度発信者情報の開示請求

   ↓

  「経由プロバイダ」がその当時そのIPアドレスで接続していた契約者の情報を開示

   ↓

(3) 「契約者」≒「発信者」(その家族や職場の人間)なことが多いので、開示された契約者経由で発信者を特定

 従って、プロバイダ等が任意に開示してくれない場合は、2度訴訟をしなければならない可能性があります。

 「プロバイダ責任制限法」第4条第1項によれば、このような開示を請求するためには、(1)被害者の権利侵害が発信者によって行われたことが「明らか」な場合、かつ(2)発信者情報を行う正当な理由(裁判をするなど)がある場合に限って可能と定めます。

 請求を受けたプロバイダ側は、開示をしない場合、故意・重大な過失がある場合に限って、その情報の被害者に賠償義務があると定めています(4条4項)。かつ、1項が「明白性」を要求しているせいで、実際にはプロバイダが任意に発信者情報を開示することは稀です。

 従って、(1)「2ちゃんねる」と(2)「経由プロバイダ」と2度裁判をしなければならない可能性があります。そのため、非常に時間がかかることが問題となっており、正規の裁判ではなく仮処分など迅速な手段を使うことが求められます。迅速にやらないと、(1)「2ちゃんねる」との裁判中に、「経由プロバイダ」の情報が保存期間終了により消えてしまうということもあります。

 問題は、「2ちゃんねる」が裁判に取り合ってくれないことが多いということです。なお、私の経験では、2ちゃんねる以外の主要な掲示板管理会社は、比較的誠実に対応してくれていますし、場合によっては任意に開示してくれる場合もあります。しかしいわゆる「経由プロバイダ」側は、ここでは説明しませんが判例の変遷や他の法例との関係もあって、任意ではまず開示しません。

 更に最近の問題は、「無線LAN」「漫画喫茶」です。要は「経由プロバイダ」側が、誰が利用したのか特定しきれない場合があるのです。後者(漫画喫茶)については、漫画喫茶側が、会員登録時に身分証の提出を求めるようになり、だいぶ解消されてきましたが、他人が垂れ流している「無線LAN」の電波を利用して発信者が書き込みをしていた場合は、ちょっと発信者本人に辿り着くことは困難です。もっとも、MACアドレスの情報などから、辿りつけることもあり得るかもしれませんが、かなりしんどいでしょう。

管轄の問題

 この種の裁判は、はっきりいって経済的利益が小さいので、弁護士としても苦慮しますが、更に問題なのは、情報公開法と異なり、特別な管轄(どこで裁判をするか)の規定がないことです。例えば被害者も加害者も神戸の人なのに、「経由プロバイダ」が東京の会社であれば、東京地裁で裁判しなければならないことが多くなります。

 しかし、「経由プロバイダ」の対応が不誠実であるとして、不法行為に基づく損害賠償請求を併せて請求することにより、地元で管轄を得ることも可能です。このような請求は不当とするプロバイダ側の反論を退けた高裁の決定もあります(大阪高決平成16年6月7日判例集未掲載)。

本件では・・・

 Q82でも解説しますが、例え被害者の本名が明らかになっていなくても特定可能なら権利侵害は発生します。そして、上述の手法によりその書き込みの削除請求が可能です。書き込んだ人間が誰かを知ることも、うまく行けば上述の方法によってできるかもしれません。

Q82 一体どういった書き込みがプライバシー侵害として違法になるのでしょうか?なんか今ひとつその境界が分からないのですが・・・

プライバシー情報の定義?

 いかなる書き込みが「プライバシー侵害」となるか・・・これはとっても難しい問題です。

 一応、プライバシーとして保護される言論を定義づけしたある判決(宴のあと事件、東京地判昭39・9・28)によれば、プライバシー情報とは、
(i)私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのある情報であること(私生活情報)、
(ii)一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立った場合に、他者に開示されることを欲しないであろうと認められる情報であること(開示を望まない情報)、
(iii)一般の人に未だ知られていない情報であること(非公知情報)

の3要件を満たす言論だとされています。

 しかし、その後、例えば、刑に服役後平穏無事に生活していた人の前科をノンフィクション小説で実名で公開してしまった場合に不法行為を認めた判例(ノンフィクション「逆転」事件、最高裁平6・2・8)【(i)犯罪情報は公的な情報とも言い得る、(iii)前科はかつて報道により知られていたので非公知ではない】、電話帳(タウンページ)に掲載されている氏名・職業・住所・電話番号を掲示板で開示した事案についてプライバシー侵害を認めた判例(神戸地判平成11年6月23日)【(iii)タウンページの情報は一般に公開されている】など、多くの判例がこの3基準では合理的説明ができない状態となっています。

 従って、この1つの定義に拘ることなく、総合的に事案を衡量してプライバシー侵害を検討していくしかないと思われます。

  プライバシー情報の侵害があったといえるか?を検討するための要素

(1) 大前提として、被害者を特定可能か?

 掲示板上でのプライバシー侵害の論点の1つは、プライバシーを特定できるかどうか、という点です。例え「藤本一郎」とは書かれていなくても、「大阪弁護士会の藤●一★(54期)」と「司法試験」の掲示板か「法学」の掲示板に書き込まれれば、これは完全に特定可能ですので、プライバシー侵害となり得ます。このように、特定可能かどうかは、書き込みの文言だけではなく、全体的な事情を考慮して決められます。特定不可能であれば、プライバシー侵害はないことになります。

(2) 公人か私人か?

 個人の情報であればプライバシー性は高くなるし、法人の情報であれば低くなります。個人の情報であっても、公人の情報であれば低くなります。  例えば、政治家のような公人だからプライバシーを享受できない、という訳ではありません。例えば正に3要件を示した「宴のあと」事件は、外務大臣にもなった政治家のことについてでした。そんな公人のことであっても、恋愛沙汰の話であれば、プライバシー侵害となり得る訳です。なお、本件は「元」外務大臣、「元」東京都知事候補であり、まさに現職である場合よりは公人性が低かったと思われます(現職の行為であれば国民の知る権利の要請が高まると思われます)。

(3) 私的な性質の強さ

 ある人間の情報と言っても、様々です。  私(藤本一郎)が弁護士であるという情報も個人情報ですが、これは仕事上の情報であり、また弁護士の仕事の性質からすれば、公的な情報でしょう。これを掲示板に書き込まれたからといって、プライバシー侵害にはならないと思われます。

 私(藤本一郎)がラブホテルから出てきた!という情報も個人情報で、これは仕事とは関係ないので、たとえ私が弁護士であっても、たとえ相手が不倫であっても、私的な情報の性質が強いので、その現場写真なり証拠の公開は、原則としてプライバシー侵害になると思われます。

 でも、その相手が、例えば離婚事件の依頼者・かつ現在なお離婚調停中だった!としたらこれは一気に性質が変わりますよね?これはたとえ私的な関係であっても、弁護士倫理上問題となり得ます。こういうのは、場合によってはプライバシー侵害にならない可能性があります。

 このように、ある情報を総合して、まったく私的な情報か、公的な部分を含むのかは分析する必要があります。

(4) センシティブな度合い

 情報の価値は様々です。

 前科情報・破産情報など、センシティブな情報であれば、たとえもともとは公的な情報であったとしても、時の経過によってプライバシー情報となり得ます。

 逆にあまりセンシティブではない情報は、私的なものであってもプライバシー性は薄いかもしれません。

(5) 非公開情報か?

 確かに非公開の情報は私的な性質が高くなるのでしょうが、公開情報だからただちにプライバシー情報ではなくなる、という訳ではないので注意が必要です。特に個人情報といわれる類の情報は、公開されているものであっても、それだけでは、プライバシー性を失わないことが多いといって良いと思われます(前述のタウンページの判例などはそうでした)。

(6) 侵害の程度

 以上を分析して、何らかのプライバシー情報を含むと判定された場合に、今度は、その侵害が酷いかどうかも参考になると思われます。特に重要なプライバシー情報であれば、軽度の侵害であってもプライバシー侵害があったと認定されやすいでしょうし、大したプライバシー情報であれば、重度の侵害がないとプライバシー侵害があったとは認定されないと思われます。

 侵害が強度かどうかか、は、侵害の目的、侵害の態様(故意か過失か、誰に対して・どのくらい漏らされたか、防止措置があったか)等を総合衡量することになります。

 また、認定の次の問題として、損害賠償としていくらにすべきかには確実に影響します。

 なお、ここでは、侵害時の侵害の程度は勿論ですが、侵害発生後の事後的な措置でどこまで救済されたかも考慮されるべきです。

個人情報保護法との関係

 最近ときどき誤解があるのが「個人情報保護法違反じゃないからプライバシー侵害じゃない」といったものです。

 個人情報保護法は、道路交通法みたいなもので、プライバシーを含めた様々な情報を保護するためのルールです。

 信号や道路規則を遵守していても交通事故は起きる。ただ守っていると交通事故の発生確率は低くなるし、仮に発生してもその責任も概して軽くなる。同様に、個人情報保護法を遵守していてもプライバシー侵害は発生します。ただ守っていると、プライバシー侵害の確率は低くなるし、仮に発生してもその責任も概して軽くなるのです。

 ですから、個人情報保護法を遵守していてもプライバシー侵害は発生します。それでも遵守すべきなのです。

Q91 なぜミクシー(MIXI)は18歳以上でないとできないのですか。高校生だってMIXIをやりたい!

 ホント、そう思うでしょ?私もそういう感覚は正しい感覚だと思います。

 実はこれ、「出会い系サイト規制法」と呼ばれる法律が関係しています(関連する解説はこちら

 出会い系サイト規制法とは、要は18歳未満は「インターネット異性紹介事業」を利用してはいけないという法律でして、ミクシーやGreeのようなSocial Network Service(SNS)は全てこの法律のいう「インターネット異性紹介事業」に入ってしまうのです。MIXIはオトモダチに招待されてオトモダチとの間でメールのやりとりをするだけ、のような使い方をしている人が実際には多いと思うのですが、私が当初から問題点を指摘しているとおり、よく分かっていない「オトナ」な方が極めてしかし不均衡に広範に「インターネット異性紹介事業」を定めた(政府解釈によれば、決して性行が目的ではない、あるいは直接の出会いすら目的ではないサイトであっても、「インターネット異性紹介事業」に該当し得る)ので、MIXIもGREEもみーんな、同法にいう「インターネット異性紹介事業」に該当してしまったのです。

 高校生だって中学生だってネットで色々な実際には会えない人と出会いたいもんだと私は思うのですが、まあ確かに危険はつきものなんですが、危険だから何でも回避すれば良いってもんではないとは思うのですが・・・。ちなみに、近時某事件で話題となった「ふみコミュニティ」は、小中学生など18歳未満にそのようなある種の「出会い系サイト」を提供しながら、『会うことは目的としないで下さい』という記載によって「出会い系サイト規制法」の網をすり抜けた、と認識してサイト運営をしていたものと思われますが、単に「会ってはいけない」とネット上で書くだけでこの網をすり抜けられるのか、疑問です。ただ、そもそもの問題点は、法律の規制の仕方が過度に広範だということは指摘しておきたいと思います。

 ちなみに、「不均衡」といいましたが、一般にはネット対戦ゲームの「チャット」は、「インターネット異性紹介事業」に該当しないので、未成年でもできるのですが、全てのチャットがそうとは限りません。もしも自社の「チャット」が18歳未満でも利用できるものかどうか不安な場合は、出会い系サイト規制法の専門家にきちんと相談した方が良いと思います(そんな人が沢山いるとは思いませんが)。

Q92 ミクシー (Mixi) で書いた「日記」は誰のものですか?

 ミクシー (MIXI) で書かれた日記の著作権は、書いた本人、つまりあなたのものです。

 著作権については、もちろん合意で譲渡することもできます。ですから、ミクシーの利用規約が、あなたに生じる筈の著作権をミクシー側ないし第三者に譲渡する旨を定めてあって、それに貴方が合意するなら、貴方の著作権がない、ということもあるかもしれません。しかし、私が確認した限り(2006年10月現在)、ミクシーの利用規約に著作権の譲渡を認める条項はありません。

 但し、あなたがミクシーで日記を公開できるのはあくまでミクシー側からサーバーのスペースを借り受けているからにすぎません。もし貴方に利用規約違反があり、その結果あなたのIDが抹消されることによって貴方が書いてきた日記が全て水泡となってしまったとしても、ミクシーに文句を言うことはできないでしょう。他方、ミクシーが利用規約違反がないのに貴方のIDを勝手に削除し、その結果あなたが書き続けていた日記が消えてしまった場合は、不法行為ないし債務不履行が成立した、と評価できる場合があるかもしれません。

Q93 ミクシー (Mixi) の「マイミク」が、「日記」をつけているのですが、「友人以外には非公開」の設定がしてあります。そこに書いていることを他の人に喋ったら違法ですか?

 んー、確かにマイミクさんが書いてある日記に、ときどきとっても有益なことが書いてあったりしますよねー。そういう情報って、どこまで他人に教えてもいいのでしょうか。著作権法・不正競争防止法・プライバシー/名誉毀損といった観点から考えてみましょう。

 著作権法上の観点からすれば、その「表現」を写す場合であれば、本人の許諾が必要なのですが、著作権法は、あくまで「創作的表現」を保護するための法律で情報そのものを保護する法律ではないので、「情報」そのものを他人に伝えたから著作権法上違法ということはありません。

 じゃあ、どんな「写し」方を許諾なくすれば、ここで「創作的表現」を「写した」ということで著作権違反になるのでしょうか。1つは、「長さ」が参考になります。長いほどよく考える必要があるからです。でも、短歌や俳句のように短くても創作的表現が結実しているものをそのまま書き写せば著作権侵害です。逆に長くても、例えば、誰かが作った2000年分のカレンダーの内容を全部書き写したっていっても、これは著作権侵害にはなりません。誰が作っても、ちゃんと計算して書けば同じ情報になるからです。そうですね、その内容を他人が独自に作ろうとしても同じようになるかどうか、と言ってもいいかもしれません。

 第2に、ヒミツの漏洩ですが、別途合意がない、という前提でいいますと、営業秘密の漏洩となれば、不正競争防止法違反の可能性があります。ただ、ここでいう営業秘密に該当するには、『秘密として管理されている』(秘密管理性)『生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報』(有用性)『公然と知られていないもの』(非公知)の3要件が必要であるところ(不正競争防止法第2条第4項)、いくら日記を「友人まで公開」に設定し、友人以外は見えないとしても、それだけで『秘密として管理されている』ということにはならないと思われます(友人の友人に公開、では全く秘密管理性はありません)。ただ勿論、マイミクの人数が本当に良く知っている1人に限られている場合など、公開のレベルが「特定かつ少数」である場合は、なお秘密管理性が失われてないと言える余地があるかもしれませんので、具体的な検討が必要かもしれません。

 第3に、プライバシー/名誉毀損といった観点ですが、これが一番重要かもしれません。例えば、悪口(人の社会的評価を低下させる言動)が書いてあったとしても、マイミクが少数でかつ仲間内(特定かつ少数)であった場合は、名誉毀損は成立しないのですが、例えば貴方が自分のホームページで公開してしまう(=不特定かつ多数への公開)と、同じ記載でも名誉毀損になるかもしれません。

 マイミクさんの日記には、たくさんのマイミクさんのプライバシー情報が掲載されます。あくまで、「友人のみに公開」に設定したということは、「マイミクさん」の範囲でしかそのプライバシー情報に接することを許していない訳です。従って、仮にマイミクさんが沢山いて、それが「特定かつ少数」ではないといえるほど多数または不特定であったとしても、貴方がその人の許可なく、プライバシー情報を転載すればプライバシー侵害になる可能性があります(本人には当該プライバシー情報を公開する・しないを選択するコントロール権がありますので)。何をもってプライバシー情報といえるか、というのは難しいですが、他の情報をあわせたらその人が特定できるような私生活上の情報は、プライバシー情報といえると思われます。

 広義のプライバシーでいえば、肖像権などは重要です。例えば、マイミクさんが掲載しているご自身の写真を無断で使えば、たとえマイミクさんが広く公開していたとしても、肖像権侵害となる可能性があるほか、著作権侵害(写真も著作物)になるでしょう。

 典型的な『マイミクさんの日記』ということに限れば、このような視点で検討し、その転載(喋る、自分のホームページで使う)の違法性があるかないかを検討して頂ければと思います。

Q&Aを全部読まれた方へ
 なんとなく、法と常識の間の違和感を感じませんか?

 私のような法律実務家でも感じることがあるので、たぶんその感覚は「正しい」のです。

 こんな利用法に著作者の許諾がいるなんて、おかしい!と思うものもあれば、その逆もあります。

 そもそも著作権なるものが、見えない権利です。どこまで?というのは、一方的に決められたらたまったもんじゃない。しかも、法律によってどんどん拡大されつつあります。利用者からすればホント辛い権利です。

 米国ではもともと著作権は14年しか保護しない時期が長かったのです。それは、自らが英国からコンテンツを輸入する立場だったからでしょう。しかし逆の立場になると、どんどん保護が大きくなってきました。今や死後70年又は公表後95年を保護します。著作権者のエゴが見え隠れします。しかしそれは、利用者側が単に無知だった、文句をいわな過ぎたという面もあります。

 著作権者と利用者のバランスは重要です。著作権者だって、利用者がそっぽを向いて利用しなくなってしまったら困るのです。例えば、いま、デジタル放送では、かなり厳格な「コピーワンス」が運用されようとしていますが、正直こんなやり方なら、私は日本でデジタル放送は見ません。見たくもない。

 両者が武器対等な知識をもって要求をぶつけ合い、マトモな「正しい」感覚に基づく利用がされる、そういう感覚に法が近づいていくための一助に、このQ&Aがなれば、幸いです。

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