2回試験実況中継

(2001年10月1日作成)

1 2回試験とは?
 2回試験。私は、このように呼ばれる試験を、2001年9月14日から、同月27日までの2週間にわたり、受験した。

 では、2回試験とは、何か?

 要するに、弁護士・裁判官・検察官(まとめて法曹と呼ぶ)になるための試験だ。
 ただ、司法試験とは違う。司法試験は、そういう法曹になることのできる研修を受けることのできる、司法修習生になるための試験なのだ。
 要するに、2回試験は、司法試験とは別の、司法修習の卒業試験なのだ。
 なお、正式名称は、単に(考試試験)と呼ばれてるが、司法試験の次ということで、(2回試験)の名称で通常呼ばれる。
 この関係を図にすると、以下のようなものになる。

 試験科目も、教養試験、筆記試験(5科目:民事裁判、民事弁護、刑事裁判、刑事弁護、検察)、口述試験(2回:刑事系、民事系)と、質量ともに重い試験となっている。
 ただ、その実体は、司法試験以上に知られていないし、私も、司法修習の当初は、どんな試験なのか想像もつかなかった。
 そこで、(これを書いてる時点では、合格発表前で不合格かもしれないが)どんな試験なのか、2回試験を実際に体験した私の切り口で、「実況中継」したいと思う。
 もしも将来2回試験を受けなければならない人であれば、事前に「こんな試験だ」と知っていれば、少しは心落ち着くのではないか。

 なお、性質上、専門用語や専門的記述がそのまま書いてあって、司法修習生や法曹でないとわかりにくい部分もあります。ご了承ください。

2 09/14 教養試験
 教養試験は、最初の日の、午後3時50分から5時50分までの2時間だけで行われた。
 この日は2時40分まで通常授業。要するに、教養試験は「大した試験」だとは思われていない。
 でも、過去にこの試験で落ちたヤツもいると聞くから、要注意ではある。
 そうそう、2回試験は、司法試験と異なり、1科目でもダメなら、即不合格である。ここが厳しい。
 だから、やっぱり、受験が終わるまでは、すごく不安だった。
 もし書けなかったら・・・。

 試験問題は、全て回収されるので、正確ではないが、試験問題はこんなんだった。

以下、2問中1問選択(実際の問題文はもう少し長かったが、趣旨はこんな感じ。別途文章の添付はなし)

第1 大学生の学力が低下してると言われるが、その原因が「ゆとりの教育」にあるとする見解がある。その考えに賛成するか・反対するかを、説得的に論じなさい。
第2 「謝罪」の役割と意味について論じなさい。

 ちなみに過去問も同様に、2問から選択式で、別途参考文章が添付されてることはない模様だ。

 私個人は、昨年から朝日新聞が特集し、私も興味をもっていた「こどもの理系離れ」の問題が出るのでは、と思っており、第1が少しカスってたから、そちらで書いた。
 まあ、結局特別な勉強もせずに書ける問題となったのだが、受け終わるまで不安でならなかった。

3 09/17 民事裁判
 土日明けの17日から、本格的な筆記試験が始まる。
 各教科、10時20分から17時50分まで。
 ちなみに、この合計7時間30分という時間は、通常の司法研修所の起案(まあテストみたいなもの)よりは40分長い。
 ただし、その分、民事裁判、民事弁護、刑事裁判には小問がつくし、この小問が40分では終わらない内容のこともよくあるから、決して時間に余裕はないのだ。

 だから、途中弁当休み1時間が一応取られてはいるが、メシなんて食べてるのは10分もあるかな。とにかく忙しい。

 ・・・まあ、うんちくは後にして、民事裁判の問題を見てもらおうか。

(問題文)
第1
 1 請求の趣旨と訴訟物(記録293号)
 2(1) 請求原因以下事実主張の整理
(2) その理由
 3 判決主文
 4(1) 記録35頁の調書記載の意味
・・・・・要するに「乙3号証(承諾書)の押印が、丸山のものであることは認、但し、丸山が押印したものではなく、偽造である」といった調書の記載にどんな意味があるんかいな、って問題だったと思う。
  (2) 土地賃借権譲渡が認められるか? 結論と、判断過程を示せ。
5 被告の平成12年1月15日相殺の主張は認められるか?結論のみ記載せよ。
 6 被告準備書面B第2の4の主張を撤回した理由は?(起案用紙1枚以内)
・・・・・主張は、第2の3で、上記5の相殺の主張をした上で、「仮に前記相殺が認められないのであれば、本準備書面によって相殺を主張する」といった主張だったと思う。
7 第2回公判調書の「口頭弁論の結果陳述」の意味(起案用紙1枚以内)
  (裁判官がAからCにここで変わっています)
 8 もう1問あった、と思うんやけど・・・。なかったかも。
第2 当事者の行為による訴訟の終了について説明せよ(起案用紙2枚以内)。

 こんな感じ。まあ、記録がないので、1、2、3については、何を書いていいか分からないよな。
 簡単な当事者の主張も付け加えます。

(登場人物)
丸山(もと所有者)、佐藤(もと賃借人)、藤井康晴、藤井隆夫(被告、康晴の子)、羽生(原告)

(主張)
<原告の主張>
 1 羽生(原告)は、平成12年2月10日、丸山からの代物弁済で、本件土地所有権を取得した。

 2 被告(隆夫)は、本件土地を占有している。

 3 よって、(遅延損害金もあったが、附帯請求は記載しないとの問題文の指示なので無視)建物収去して明渡せ。

<被告の主張>
 1 要するに、被告には賃借権がある。

 2 もともと本件土地は原告の言うとおり、丸山のものだ。

 3 丸山から佐藤ってヤツが、平成4年の※月に、土地の賃借権の設定を受けた。
   その時、建物所有目的、期間定めなし、賃料20万、賃料は翌月分を前月末日に先払い、1回でも賃料支払いをしないと無催告で解除するよ、との特約があった。

4 すぐ建物(立体駐車場)は建てられ、保存登記された。

 5 平成7年に賃料は22万に改訂された。

6 平成11年6月ころ、佐藤から、俺のオヤジの康晴が、本件土地の賃借権と、建物を2000万円で買わないか、と言われた。
   7月1日、正式に土地賃借権と建物所有権の売買契約締結。
   7月30日、建物所有権移転登記

 7 上記賃借権譲渡については、6月20日に丸山の承諾を得た。
   ここに承諾書(乙3号証)がある。(ワープロ書き、丸山の印あり)

 8 平成12年3月1日、康晴が死亡し、私(被告=隆夫)が包括的に承継した。

<原告の主張>
 1 賃借権が譲渡されたなんて、知らないし、丸山は承諾書に印なんて押してない。
   印は丸山のものではあるが、承諾書は偽造だ。

 2 仮に、賃借権が譲渡されていたとしても、康晴は平成11年7月分から平成12年1月分の賃料の支払がないから、賃料不払いだ。

 3 そして、丸山は、平成12年1月29日に、康晴の不払いにつき、無催告解除の内容証明郵便を康晴、佐藤に通知し、これが同月30日に到着。

<被告の主張>
 1 賃料が不払いなのは、以下の事情からだ。
  (1) 佐藤が平成7年の阪神大震災の時に土地が崩れたのを、自分で業者を探してきて修理費用240万円を、平成7年3月20日に負担した。
  (2) 佐藤は、平成11年の本件土地賃借権譲渡に先立ち、平成11年6月20日、この費用のことを丸山と話をし、うち100万円は土地賃借権譲渡承諾料ということでチャラにし、残り140万円を康晴に譲渡するということにした。
  (3) 康晴は、佐藤から、140万円の費用返還請求権があるので、約6か月は、賃料を払わなくて良いと聞いた。

 2 もっとも、平成12年1月15日、丸山が我が家にやってきたとき、康晴は、丸山に対し、相殺の主張をした。

 3(撤回部分)更に、仮に2の主張が認められないとしても、この準備書面で、原告に対し、相殺の主張をする。

<原告の主張>
 1 丸山は、康晴に対し、昔、丸山の子供が康晴の孫にいじめられたことで、感情的反感を抱いているから、賃借権譲渡に承諾する筈がない。

 2(撤回部分)相殺の自動債権である費用返還請求権は、1年の短期消滅時効がある。
   だから、時効を援用する。

 ・・・だいたい事案分かったかな?
 もちろん本当の試験では、こんなんじゃなくて、「準備書面」といったカタチで、本当の訴訟のような記録になって出題されてるんやけど、雰囲気はつかめるかな?

 法律興味ない方、ここではちんぷんかんぷんかもしれませんが、こういう原告・被告の主張を整理することが、民事裁判の基礎として、まず要求されるのです。

4 09/18 民事弁護
 民事弁護の試験は、対策が立てにくい。
 同じ民事系でも、何をすべきかが明確な民事裁判とはそこが違う。
 ただ言えることは、民事保全・民事執行は絶対出る、ということだ。
 そして今年も出題されている。

第1
 記録116号に基づき、被告準備書面(2)を起案せよ。
 なお、原告第2準備書面は、別紙添付のとおり。

第2
 XとYは、Y所有の土地と、その上にある住居・倉庫(土地に空き地はない)をまとめてXに売る契約をした。ところが、Aが住居につきYより使用貸借を受けていたとして明渡を拒絶している。また、Yも倉庫についてY所有の機械があるとして明渡を拒絶している。
(1) Xの代理人丙野三郎弁護士は、Xの依頼に基づき、本訴を提起しようとしている。
  その前にXのために、誰にどのような保全処分をしておくべきか。
(2) 上記事案において、XA間に訴訟上の和解が成立し、和解条項ができた。
<条項>
A 被告は、原告に対し、第4項の金員の支払があれば、第1項の期日限り、本件建物を明渡す。
・・・みたいな感じ。
 しかし、Xは期日に金を振り込んだのに、Aは明け渡さない。
 この場合、どういう手順で強制執行されるのか。
 必要な証拠や執行機関等を盛り込んで説明せよ。

 ちなみに、記録116号の事案は、原告がまず被告に保証債務の履行を請求し、被告がこれを争うというもの。
 保証人っていうのは、主債務者と同じ書面に、署名とハンコがあれば、簡単になれてしまう。
 被告が保証人として、契約書に記載されていて、ハンコも被告本人のものだが、署名は違うみたいだ。
 さて、被告としてはどうやって争うか。
 原告が、@被告本人が保証した、A被告は保証していないとしても、主債務者が有権代理した、Bそれもダメでも、表見代理(110条)が成立する、Cさらにそれもダメでも、被告が後日追認している、という流れなので、それに沿って反論をすることになろうか。

 ちなみに、表見代理の基本代理権としては、別の保証人に被告がなったときに、被告が、主債務者に、印鑑証明書を取ってくるように頼んだことが指摘されている。司法試験論点だよね?(私は少しミスしてるけど)

 正直、デキはあまり自信ない。民裁は落ちてない、と思うけど、民弁は落ちた、と言われても文句いえないかもなあ・・・。

5 09/19 刑事裁判
 ・・・放火でした。
 刑裁では1回もやってないやん!
 検察では出るかも、と思っていたけど・・・。
 まあ、通っていてくれている、と信じたい。

第1 刑事訴訟記録第284条に基づく起案。
1 主文
 2 理由(但し証拠の標目等は不要)
 3 事実認定上の問題点
第2 新実例刑訴53の改題。

 こんなんです、では、よく分からないでしょうから、事案をもう少し掘り下げてみます。

 記録第284号について。

(罪となるべき事実)
第1 現住建造物放火未遂罪
第2 公務執行妨害罪+傷害
(法令の適用 たぶん記憶に基づくと・・・)
 判示第1の所為は刑法112条、108条に該当し、判示第2の所為のうち公務執行妨害の点は同法95条1項、傷害の点は208条に該当するが、判示第2の所為は、1個の行為が2個の罪名にあたる場合であるから、同法54条1項前段、10条により1罪として重い傷害罪の刑で処断することとし、判示第1の罪については所定刑中有期懲役刑を選択し、判示第1の罪は未遂であるから同法43条本文、68条3号を適用して法律上の減軽をし、以上は同法45条前段の併合罪であるから、同法47条本文、10条により重い判示第2の罪の刑に法定の加重をし(ただし、短期は判示第1の罪の刑のそれによる。)、その刑期の範囲内で被告人を懲役4年に処し、未決勾留日数中100日をその刑に算入し、押収してある簡易ライター(黒色)1個(平成13年押第38号の1)は、判示放火の用に供した物で被告人以外の者に属しないから、同法19条1項2号、2項本文を適用してこれを没収し、訴訟費用は、刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。

(法令の適用のポイント)
→放火の方が重い筈が、有期懲役刑を選択して法律上の減軽をすると、あら不思議、傷害の方が重くなってしまう!(短期は放火に合わせる)
→科刑上一罪になった時点で、傷害罪の罰金刑は適用がなくなるので、第2の罪については、刑種の選択がない。

(争点)
 @被告人が放火犯人か?
 A暴行態様
 B被告人が相手が公務員と認識していたか?
→冒頭手続などで確認すれば分かるハズ。

(書いた感想など)
 ちなみにウチの部屋(中教室、25名程度受験)で、第1問が30頁以上だということで黒ヒモで解答用紙をくくった人(2回試験では、通常の授業の起案と異なり、解答用紙はホチキスではとめない。原則としてプラスチックのピンのようなものでとめるのだが、30枚を超えるととめにくくなるそうで(確かに今日はギリギリだった)、その時は申し出ると黒ヒモがもらえる)は1人だけだった(前日も前前日ももっといた)ので、これでもかなり多い方なのかな。それくらい時間が足りなかったという印象。小問に1時間少しかけてしまった俺もアカンかった。小問はなんとしても1時間以内でやるべきだった。

6 09/20 検察
 いやー、問題はおもしろかった。
 今日は、PS2の「電車でゴー山陽新幹線編」の発売日。そこに合わせて、新幹線切符の横領の問題を出すなんて、検察官のセンスはすばらしいと思った。

 きちっと構成する時間のあった犯人性と情状は問題なく書けた。
 構成要件等法律問題のところが、分かっていたのに小さなミスをいっぱいしたので、余り評価されないだろうなあ・・・。書くべきことがいっぱい見つかってしまって、なかなか他に手が回らなかった・・・。47頁書いたけど。新記録(笑)。

(記録283号)
 事案は、業務上横領。但し、その成立範囲と、有価証券偽造・同行使・詐欺の成否なども問題になる。

 **旅行株式会社で勤務していた、村松猛(仮名)という人は、財務部経理課の係長。JR切符関係の仕事を一手に統括管理していた。
 旅行会社は、JR切符の委託販売を、JRより受任するが、その際、JRは、切符を旅行会社の求めに応じて渡し(これを切符原紙という。切符の種類や区間が既に書いてあるが、発行日、有効期間、発行箇所の記載は空白)、その後、旅行会社が、発行日、有効期間、発行箇所(例えば、「▲▲旅行新橋支店」)を補充して消費者に販売する。
 その切符原紙の段階で、Aが横領し、自ら権限もないのに、発行日と、有効期限、発行箇所を補充し(しかしJRの紙を使っているので、真正にしか見えない!)、金券ショップに売ったとして、**旅行から解雇され、告訴されたのである。
 **旅行からの告訴事実及び警察からの送致事実は、業務上横領のみ。
 しかも、記録を見る限り、平成12年2月7日に、金券ショップに売った分(額面161万3300円分)だけである。しかもこの日の分には、有効期限は補充されていなかった。
 ところで、この時点で、2月1日にも、Aが▲▲旅行新橋支店で換金してるらしき事実が伺える(これは全て有効に補充されている)。また、Aの口座記録や、**旅行の内部調査から、Aは、同じやり方で、2月7日以外にもおよそ1600万円分の切符原紙を、無権限で補充して、金券ショップ等に売却してる。
とすると、業務上横領以外にも、たくさんの罪が問題となる。
 記録は122頁もあり、大変だが、いくらでも書くことがあるのだ。

 ちなみに私は、メインではない法律問題の適用法律を大きく間違えている。まさか、それで落ちるってことは、ない、よな?(苦笑)。

7 09/21 刑事弁護
 
(事案の概要)
(公訴事実)
 平成2年(笑)8月18日ころの午後9時20分ころ、
 京都市山科区御陵(みささぎ)※※※所在の居酒屋「▲▲」前路上
 覚せい剤結晶0.1gを、Bに譲渡。

 なお、Bは覚せい剤自己使用で先に逮捕。

(証拠)
・BのPS(9/10付け×2+9/21付け) 犯行状況
 被告人はバイクでやってきて、5000円で売ってくれた。
 但し、9/10と9/21で、日にちに1日のズレ

・Bの公判(崩れてる)
 くれたのは被告人かどーか分からない。
 8/18ってのも怪しい。捜査段階で記憶曖昧になってた。
 バイクは被告人のバイクに似てるが、番号が違う(被告人のバイクは2000番)

・中沢(内縁の妻)
・松嶋(その友達)
 いずれも8/18午後9時20分に被告人にアリバイがある旨の供述。
 なんでも、8/18午後8時50〜9時20に、宇治市の被告人の自宅にいる中沢に松嶋が電話。日付は、その日が中沢の娘の退院の日だったから覚えている。カレンダーにもその旨の記載がある。
 →この「カレンダー」がどーも証拠偽造っぽい兆候。

 ってことで、他にもいっぱい証拠があるんやけど省略。

 京都に住んでる者としては、細かい地名等がきになった。証拠上、同一の地点を「四条東大路」「祇園」と別々の表記としているのだが、私には同一地点と分かるが、果たして、京都以外の人に分かるのだろうか??

 私の基本路線は、@Bの供述の信用性(+任意性)をたたき、Bの捜査供述は信用性がないと言い、A他方でBの公判供述は信用性はあるが、公訴事実に対する証明力がないと書き、Bアリバイ主張がなんとか(笑)成り立ちうる、というカタチにしたが、どうだろうか。

8 09/25〜27 口述
 口述試験は、25日から27日まで、3日のうちの2日を使って、民事系口述と刑事系口述の2つの試験が行われた。
 人によって、いつ刑事系があるか、民事系があるか異なるが、私は、25日に刑事系、27日に民事系があった。

 試験の再現を1つだけしておこう。
 25日の刑事系口述を。
 あ、刑事系は試験官が3名。弁護士、裁判官、検察官各1名です。

私「失礼します。受験番号***、藤本一郎です。」

弁『はい。座ってください。それでは、私からお聞きします。』

弁『業務上過失致死傷の事件が起きて,被疑者も意識不明の重体で,病院に運ばれました。
で,警察官が駆け付けたところ,被疑者は意識を失っているにも関わらず,酒臭いとか言って,医師に言って採血させたという事案です。
で,何か問題ありますか。』

私「はい。刑事弁護の立場からしますと、令状なしで採血することが、違法であると主張することになります。」

弁『じゃあ、どんな令状が必要なの?』

私「えっと、採尿ではなくて、採血ですから・・・(頭真っ白)。
鑑定だと思います。」

(鑑定という言い方に不満だった模様)

弁『まあいいでしょう。鑑定処分許可状がいるとして、それだけで不都合はないですか?』

私「えっと、鑑定は任意処分ですから・・・」

(何故かつまってしまう) 私「検証令状を併用する、と思います。」

弁『え、そうですか?』

(うーん、まずい・・・)

弁『まあいいでしょう。令状がないまま、血液の鑑定書が証拠申請がなされた場合、弁護人として、法廷でどういう意見を言いますか?』

(前のミスはええんかなあ・・・心配しつつ)
私「はい、鑑定書は違法収集証拠であるとして、検察官の証拠申請に法309条の異議を申し立てると共に、不同意の意見をいいます」

弁『収集した証拠が違法となる基準を示した判例を知っていますか?』

私「はい。最高裁は、『令状主義に反するような違法があって、しかもこれを証拠として採用することが将来の違法捜査抑止の見地から不当な場合』だと思います。」(やや不正確だがええやろう)

弁『ところで鑑定書は違法収集証拠ですか?鑑定書の作成自体が違法なのですか?』

(ははーん、毒樹の果実と言わせたいわけやな)
私「いわゆる毒樹の果実で、本件は、「違法収集証拠に基づく証拠」ですから、やはり違法収集証拠となると思います。」

弁『そう主張したんだけど裁判所が鑑定書を採用してしまったときはどーするの?』

私「証拠採用が違法ですから、309条の異議を申し立てることになると思います。」(だったかなあ)

弁『それでもダメだったら?』

私「・・・えっと、他には・・・」

弁『弁論とかでは?』

私「はい、裁判所の証拠採用が不当と主張することになります」

裁『親告罪で、検察官が、「告訴の存在」を立証趣旨にして、告訴調書を証拠請求したんだけど,弁護人が不同意にしました。裁判所としては証拠採用できますか?』

私「はい。」

裁『それは何故ですか』

私「告訴事由の有無自体は訴訟法上の事実ですから、自由な証明で足り、伝聞法則の適用がないからです」

裁『では、立証趣旨が、任意に告訴権者が告訴したことなら?』

私「任意性は訴訟法上の事実ですが、罪体と不可分の関係にあるから、厳格な証明が必要と考えます」

裁『え!実務でもそうなっていますか?』

私「実務では、自由な証明ですが、争いになれば厳格な証明に準じて証拠調べを行っています」

裁『立証方法としてはどのようなものが考えられますか』

私「被害者を呼んだり、警察官を尋問することが考えられます。」

なお、その後2分程度、検が、検視について聞いてきた。

 1回の口述は15分程度で、刑事は、3人が少しずつ聞いてくる。ただし、3日のうち各1日が、各教科のメインとなっている時で、私の時は刑事弁護が、メインだったため他は短かった。

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