世界遺産となった原爆ドーム


 原爆ドームは被爆以前は産業奨励会館という「ハイカラ」な建物だった。それが爆心地から500mという近距離であったために写真のような無惨な姿になってしまった。

 ドームもこんなボロであるから、保全には金がかかる。過去2回の募金活動、そして世界遺産への登録によって、永久保存が正式に決定した。しかし、一時、取り壊してしまうべきとの意見も根強かったことを、忘れてはならないと思う。

 そういえば昔、「世にも奇妙な物語」というTVで、原爆や戦争について忘れてしまっている世界にただ一人投げ込まれてしまった主人公が、その世界の人にドームについて「あれは昔の大火事で・・」と説明された場面があった。原爆そのものを忘れ去られるのは、原爆がなくなってからでいい。


写真2(右)・T型の橋・相生橋より原爆ドームを望む

 世界遺産に登録の際、アメリカは賛成しなかった。どの国でも自国の罪は認めたくはない。しかし、それでは(正しい歴史認識などあり得ないとしても)より客観的な歴史にたどりつけない。日本も従軍慰安婦問題を中学校教科書に記述するに関して、歴史認識について大いに議論されたが、私は日本こそ、自ら恥じるべき歴史を全面に掲げるべきだと思う。

 国民の一部が慰安婦問題や南京大虐殺等で、「そんな事はなかった」と発言することは、逆に我々にとってみれば、米国政府から「原爆など落とさなかった」と言われるのと同じである。日本が、「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」と思うのであれば、悪は悪として認めないと、広島の訴える非核運動は全く意味のないものになってしまう、沖縄の訴えも全く意味のないものになってしまうことを心に留めるべきである。

(97/01/28)


写真3(右)・ドームを南側から望む

原爆ドーム
広島駅より、市内電車(広島電鉄)宮島・己斐方面行き乗車10分、原爆ドーム前下車、徒歩1分。


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