Zビザ取得への道のり

はじめに
 ある人が外国に滞在する場合、その滞在先のビザ(日本語:査証、中国語:护照、英語:VISA)を取得するのが原則です。

 中国に外国人が滞在する場合も同様で、日本人の場合、15日以内の滞在であればビザ免除となりましたが、そうではない場合は、適切なビザを取得しなければいけません。

 このうち、もしも中国国内に常住して報酬を得る仕事を定期的に行う場合は、Zビザを取得しなければいけません。

 ところが、中国の場合、ただビザだけ取れば終わりという訳ではなく、以下に述べるような長い手続全部やらないと、ダメなのです。というのは、Zビザ単独では、30日間合法的に滞在できる権利しか与えられず、しかも出国すれば再度ビザを得なければいけないからです。

 この入国後30日以内にしなければいけないことも結構多く、時間的にもタイトなので、私の経験を以下記載させて頂きました。

   これらの手続に要する時間は、確かにビザのエージェントにお金を払うことで節約できますが、だからといって手続が早くなる訳でも確実になる訳でもないですし、様々な手続を覚える第一歩だとも思いますので、基本的に自力で準備することをオススメします。

 なお、私は上海で働きましたので、他の地区では、細部が色々と違うと思われます。また、同じ上海でも、時期により取扱いが異なるようです。私の上海入国は2007年8月29日ですので、この点も頭に入れて頂いて読んで頂けますと幸いです。

2007年10月1日  藤 本 一 郎

1 外国人就業許可証
 Zビザの取得のために一番最初の最初にやるべきことは、外国人就業許可証を取得することです。上海市で働く場合は、上海市外国人就業中心(上海市吴淞路258号耀江发展中心)で申請します。なお、これは雇用主が申請すべきものであって、就業する個人が申請するものではなく、また就業より1ヶ月程度以上前に行うべきものです。

 なお申請時の必要書類は、
外国人就業申請書
・(雇用先の)営業登記証明等の写し
・組織機構代码証の写し
・(外商投資企業の場合)批准証書の写し
・当該外国人の履歴証明(雇用主による押印のある証明書、最終学歴の記載があるもの、中国語で書かれたもの)
・当該外国人の雇用に関係する資格の証明書(私の場合は、弁護士登録証明書や、最終学歴の証明書など。中国語が無理な場合は、中国語の訳文(雇用主の押印が必要)を付する)
・当該外国人のパスポートのコピー

です。手続は15日程度必要です。

2 被授権単位签证通知書
 これは、当該雇用地における人民政府から、領事館にあてて、Zビザをこの内容で発効しても良いですよ、という通知書です。雇用主が先述の「就業許可証」を持っていくことで取得できます(私も自分でこれをやった訳ではありません)。

 上海市の場合は、上海市対外経済貿易委員会内にある人民政府外事弁公室が発行します。なお、浦東の場合と、それ以外の上海市の場合で窓口が異なります。

 申請時の必要書類は
・申請書
・上述の就業許可証の原本と写し(原本は返却されます)
・雇用先の営業(執業)許可証の写し
です。

 だいたい3営業日程度手続に時間を要します。

上海市対外経済貿易委員会
中国上海市娄山关路55号 新虹桥大厦

3 Zビザ
 上述の「就業許可証」と「被授権単位签证通知表」があれば、Zビザの申請ができます。このとき、気を付けなければいけないのは、申請は、「通知表」記載の領事館でしかできないということです。私は、大阪が指定されていたのですが、ロサンゼルスで申請しようと計画していたので、ちょっと焦りました。

 Zビザ申請時の必要書類は、
・申請書(書式は大阪領事館の場合こちら
・写真(申請書に添付)
・当該外国人のパスポートの原本と写し(原本は返してくれます)
・「就業許可証」の原本と写し(原本は返してくれます)
・「被授権単位签证通知表」の原本(ここで使われたら以後使いませんので原本は帰ってきません。一応コピーを取っておくことをオススメします)
です。いわゆる「健康診断書」は、このタイプのZビザの場合は不要です(後に必要ですが、この段階では要りません)

ビザ申請費用は4000円程度、手続に4営業日程度かかりますが、特急ですと24時間以内に完了します(+3000円くらい必要だったと思います)

4 外国人体格検査記録
 これは、結論から言えば、私のような就業許可証を取得する場合のZビザの場合は、無理に日本国内で取得しなくても良いのですが、取得しておくと、中国で健康診断を受けなくても良い、かもしれないという意味で、日本で取得する意味があります。「かもしれない」という点については後述します。このフォームは、中国領事館のWebsiteにありますので、必ず事前に印刷し、写真を貼付してから、日本の場合、国公立病院で健康診断を受診して下さい。ちなみに私の場合は、市立堺病院で受診しました(予約不要)。何故かと言えば、この手続に慣れておられて、早い(3営業日で完了・・・例えば金曜日に健康診断受診すれば、火曜日には書面を受領できます)からです。

 受付は午前8時半から11時頃?まで。実際の健康診断は2時間程度を要したと思いますが、混み具合によると思います。書面受領の際は意思による面談を兼ねますので待ち時間を含めて1時間程度は要したと思います。こちらは午前9時半から11時頃?までに行きます。

 ほぼ保険適用外なので費用は病院によりますが、だいたい2~3万円必要だと思います。

 なお、健康診断を受けた際に、レントゲンを撮りますが、このレントゲンは病院から借り受けて中国に持参して下さい。持参しなければ、レントゲンは撮り直しになることが殆どのようです(ならない場合もあるそうです)。レントゲンについては、飛行場の手荷物検査を通す時に、特段の措置は要りません(特別の配慮をしなくても、変な画像が映ったりすることはありません)。

 ここまで完了すれば、日本出国です!!

5 境外人員体格検査記録験証証明
 出入境検査検疫局(上海市金浜路15号(哈密路1701号の西側))で、俗に「健康証明」と呼ばれる書類を取得します。これがないと、就業証(就業許可証とは違います)を取得できないので、まずこれが最初です。

 実際はいかなる証明書をもっていても、この役所にいる医師との面談が必要になるため、予約しておかないといけません。現地に行くか、電話021-6268-8851(8時~17時)で、必ず予約して下さい。私は予約なしでここに行ってしまい、数日無駄にしてしまいました。

 この証明書の申請に必要な書類等は、

・パスポートの原本と写し(原本は返却されます)
 なお、入国以後のパスポートの写しには、最初の頁(写真や番号の記載がある頁)、ビザのある頁、中国入国日の記載(日本出発日ではない)のある頁の全ての写しが必要です(以下同じ)
・雇用先の営業(執業)許可証の写し
・写真3枚(4×3cm)
・最大702元
・外国人体格検査記録(原データも含む)

です。

 「最大」というのは、外国人体格検査記録を全く持参しないか、その健康診断の内容を現地医師が疑わしいと思う場合(例えば原データがついてない、等)に、全部検査した場合の費用です。702元といえば1万円強ですから、日本で健康診断受けてしまうよりは、全部中国でやった方が安いには安いです。ただ、ここの健康診断で初めて引っかかってしまった場合を考えると、果たして日本で健康診断受けない方がいいのか、ちょっと疑問もあります。

 私の場合、日本で健康診断を受けたので、外国人体格検査記録の書類を持参し、医師と面談しましたが、血液検査だけは再度中国でやらされました。何故なのかは分かりません。その場合の費用は合計311元でした。この場合、予約した医師面談日から4営業日で証明書を取得できます。面談のみで何も検査を要しない場合は2営業日で取得できるそうです。

 面談等は午前中に行われます(8時頃から)。なお、面接と採血に要した時間は約1時間、証明書の受領の際に要した時間は5分程度でした。

6 就業証
 1で就業許可証を取得したのと同じ役所で、就業証を取得します。手続は、私の場合10元、4営業日でした。この窓口は申請時も受領時も空いていて、あっけに取られた覚えがあります。

 提出書類は、

外国人就業登記表(2通)雇用主の押印必要
・外国人就業許可証(写し)
・境外人員体格検査記録験証証明(健康証明)(写し)
・パスポートの原本と写し(原本は返却されます)
・雇用契約書(写し)
・写真3枚(うち2枚は上記登記表に添付、残り一枚はここで貰える就業証に使われます)

です。但し、就業許可証については、写しを担当者が見て、コンピュータのデータにアクセスできた時点で、私に返却されましたので、実際には提出していません。

 お金は、就業証と、登記表1通(役所の押印があるもの)を受領する際に払います。なお、これらの書類は居留許可の申請に必要です。なんか「わらしべ」みたいですよねえ。

7 境外人員臨時住宿登記単
 これは、8で見る居留許可の申請に必要な書類なので、取得しておきます。

 居留許可申請時にホテルにまだ滞在中の場合はホテルがくれます。既に自宅を別途借りている場合は、自宅付近の派出所で貰います。

 派出所で貰う場合の添付書類は、

・賃貸借契約書の原本と写し(原本は返却されます)
・パスポートの原本と写し(原本は返却されます)

です。

 なお、費用はかかりません。派出所に行けば即座にくれます。私の場合、警察の方がお忙しいようで、30分くらい時間がかかりましたが。

8 居留許可
 この許可とZビザが一体となれば、許可の満期まで、自由に出入りできるビザになるのだそうです。アメリカにいたこともあって、制度がこんがらがって、まだ仕組みがよく分かっていませんが。いうてみれば、I-94みたいなものなんでしょうかねえ。

 さて、申請場所ですが、上海科学館駅(3番出口)から徒歩10分のところにの新しい出入境管理局(上海市民生路1500号)です。

 ここの3階で居留許可の申請を行い、1階で受領・手数料の支払いをします。
 申請時、私は1時間半(約100名)待たされました。感覚的にはこの手続の中で一番待たされたという感じです。

 私の場合の実際の必要書類は次のとおりでした。

居留許可申請書
・臨時居住証明書の原本と写し。なお、原本は返却されます。なお、Websiteでは写しとは書いていませんでしたので、私はコピーを持っていかなかったのですが、現場で1枚1元でコピーができました。
・パスポートの原本。許可を貰うまでパスポートを預けなければいけません。
・境外人員体格検査記録験証証明(健康証明)の原本。ここで使い切りになります。
・雇用主の公函。書式は何でも良く、要するにこいつを雇います、と書いてあれば良いです。
・雇用主の批准書・営業(執業)許可証・組織機構代码証の写し。Websiteには原本と書いてありますが、私は写ししか持っていきませんでした。
・就業証の原本。これも許可を貰うまで預けなければなりません。
・写真1枚(申請書に貼ります)

 私の場合、申請の翌週に取得できました。手数料は400元と結構な額でした。

おわりに
 このように、Zビザの手続を完了するのには、非常に長い時間と沢山の手続が必要となります。「30日以内に居留許可を取得」するためには、Zビザを持っている人でも、その前に2つの手続が必要です。結構大変ですので、頑張って取得しないといけません。

 しかも、特定の職業では、別の許可も必要です。例えば、私がまさに中国で弁護士業務を行うとすれば、別途司法省の許可も必要でした(今回の滞在中は、中国弁護士の「助手」(助理)という形式にしましたので、これは必要ありませんでしたが)。

 なにもZビザに限らず、中国では、お役所が様々な「許可」や「証明」を発行するために、手続が色々あって、その前後関係をしっかり理解しないと、大変です。でも、面倒なことを諦めずに1つずつこなしていけば、かつ、十分な時間的余裕があれば、なんとかなるものでもあります。そういう「頑張り」の参考になればと思い、ここに記載した次第です。

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